感想とおすすめポイントまとめ
- 外れ職業の錬金術師になってしまった主人公デイジーが、持ち前の頑張りと周囲の支えで成長していくお話。
- 正統派の錬金術師ものを読みたい人におすすめの作品。ポーション、料理、化粧品、インゴットと充実の品揃え!
- 連載中。174話終了時点でおよそ小説3冊強のボリューム(約42万字)
- 2021年2月に小説版が発売予定!
採取あり、調合あり、武器作成ありの錬金術フルセット!
yoccoさんが「小説家になろう」にて連載中の作品です。2020 年8月に投稿を開始されたところにも関わらず既に40万字越えの大作となっています。2月10日にはカドカワBOOKSから小説版が発売されるとのこと、おめでとうございます!
こちらの作品はアトリエ正統派の錬金術師が主人公です。錬金術師が不遇な世界にあって、主人公デイジーは鑑定スキルをフル活用して大きく成長していきます。
錬金術師のハートともいえる調合については、材料や調合器具に品質と細かく書き込まれており、調合アイテムも各種ポーションに料理、日用品に化粧品と多岐にわたります。仲間と一緒に材料採取に出かけたり、レア素材からの武器作成要素も加わってきたりと、錬金術師ものの魅力をあますところなく詰め込んだ素敵な作品となっています。
また本作の特徴として、デイジーの仲間や家族、周囲の人々や精霊にいたるまで、登場キャラクターが皆優しいことが挙げられます。表から陰から優しく見守られて、デイジーが生き生きと成長していく様子は読んでいて心が温かくなります。そうそう、モフモフ要素もばっちり備えられていますよ。
冒険範囲が徐々に広がり、珍しい素材を手に入れ、武具も強くなり、世界の綻びが垣間見えと、デイジーは錬金術を武器にますます活躍していくと思います。今後のストーリーを楽しみにしています。
ノベライズもおめでとうございます! やはり錬金術師もののは絵があるとイメージが大きく膨らみますよね。
おすすめ度(174話時点)
★★★★(星4つ、オススメ)
★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。
あらすじ
私はデイジー・フォン・プレスラリア。優秀な魔導師を輩出する子爵家生まれなのに、家族の中で唯一、不遇職とされる「錬金術師」の職業を与えられてしまった。
こうなったら、コツコツ勉強して立派に錬金術師として独り立ちしてみせましょう!
そう決心した五歳の少女が、試行錯誤して作りはじめたポーションは、密かに持っていた【鑑定】スキルのおかげで、不遇どころか、他にはない高品質なものに仕上がるのだった……!
薬草栽培したり、研究に耽ったり、採取をしに行ったり、お店を開いたり。
色んな人(人以外も)に助けられながら、ひとりの錬金術師がのんびりたまに激しく生きていく物語です。
「小説家になろう」本作ページより引用
蒸留水作成からはじまる正統派錬金術師ライフ
本作におけるデイジー初めての調合は蒸留水。鍋をぐるこーんして錬金するわけではなく、ガラス器具で井戸水を沸騰・蒸留して作成する本格仕様です。
次作のポーションについても、薬効成分のある薬草を煮込んで抽出することで作成しており、薬草の苦みがポーションに移らないようにするため下処理に気を遣うところまでリアルに描かれています。
錬金術には時に「魔力」も使いますが、あくまで抽出や反応を促進する程度の役割であり、基本は科学ベースとしているのが本作の魅力的なところです。有毒な鉛製おしろいの代替品として、マイカと亜鉛華の粉末を提案するくだりなど、まさに現実の化学の知識ですよね。化学屋としても楽しく読ませて頂きました。
パンをはじめとした美味しそうな料理の数々も登場します。こちらも発酵を魔力で手助けしたりはしますが、基本はきちんとした製法に則ったもの。デニッシュはバターをしっかり伸ばして挟み込みますし、チーズもレンネット探しからスタートする本格仕様です。次々登場する美味しそうな料理と作り方解説も、本作の大きな魅力だと思います。
デイジーの錬金術を支えているのが鑑定スキルなのも面白い点です。確かにゲームや小説だと、アイテムの性能として「品質:普通」とか「効果:大」などと表示されるのが当たり前すぎて気にもしなかったのですが、現実でこれができたら物凄いことですよね。合成実験の時に、目的反応物がちゃんとできているかどうか知るのにどれだけ苦労したことか…
デイジーの頑張りと鑑定スキルで不遇職業の錬金術師が輝いていくという展開は、物語とリアリティーとの絶妙のバランスが取られた設定だと思います。
とても優しい気持ちで読める作品です。化学や料理の知識も身につくかも!?
錬金術師ものが好きな方であれば、ぜひご一読を!