『ロープレ世界は無理ゲーでした − 領主のドラ息子に転生したら人生詰んでた』 モブ転生で始めるサブルート正統攻略記(二八乃端月)

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二八乃端月さんの作品、『ロープレ世界は無理ゲーでした − 領主のドラ息子に転生したら人生詰んでた』 をレビューします。

  • やり込んでいたゲーム世界にやられ役のモブキャラとして転生してしまった主人公が、数年後に起こる魔物襲撃での死亡エンドを回避するために一歩一歩がんばるお話。
  • チート無しの正統派ファンタジー。主人公がゲーム知識を武器にレベルアップや仲間集めに励み、着実に力を付けていく様は正統派主人公のよう。ストーリー展開も秀逸。

 

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モブキャラ転生からはじまる正統ゲーム攻略が楽しい作品

二八乃端月さんが「カクヨム」、「小説家になろう」で公開中の小説です。こちらの作品、実は数年前にKADOKAWAからライトノベルとして発売されたのですが、販売数が振るわずに残念ながら1巻で打ち切りになった経緯があり、巻き返しを図るためにレーベルの許可を得てオンライン小説サイトでの公開に踏み切ったという異色の経歴の持ち主です。

商業化作品の実力は折り紙付きであり、今年5月の公開から人気は急上昇。カクヨムでは月間、週間、日間ランキングともに1位を獲得し、星評価も1万弱に達するなど非常に高い評価を受けました。この反響を受けて、KADOKAWAでも今後の1巻の売れ行き次第では、続刊の発売も検討するとのこと。かぴばーも応援しています!

本作はゲーム世界への転生もの、流行りのジャンルですね。現実世界で営業職のサラリーマンだった主人公ですが、外回り中に階段で足を踏み外し、気が付くと以前にやり込んだゲームの世界に転生していました。ただし、転生先の少年キャラはゲーム世界の主人公たる勇者ではなく、序盤のかませ役である悪徳領主の息子ボルマン。しかも、転生時から数年後には、ボルマンの住む領土は魔物の襲来によって滅亡することを思い出します。人望なし・お金なし・レベル低しの3重苦ながら、ゲーム世界と現実世界の知識を武器に、生き残りを賭けて立ち上がりますが…

さすがの商業化作品であり、文章力が高くてとても読みやすく、ストーリー展開も緩急が心地よくて引き込まれます。主人公ボルマンを囲む仲間たちも、健気なヒロインにツンデレ魔法少女、脳筋戦士に金庫番と、安心して読める定番ラインナップでありつつも各キャラの書き込みが深く、生き生きとした活躍ぶりを楽しむことができます。

ストーリーは出版済の部分をちょうど通り越して一段落したところであり、これからの新しい展開が楽しみです。続刊の出版を心待ちにしています!

  • 投稿サイト:「カクヨム」「小説家になろう」
  • 21年5月投稿開始、連載中
  • 21年8月時点にて約40万字、小説およそ3冊分のボリューム。

おすすめ度

140話時点(2021年8月)

★★★★★(星5つ、名作!)

★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。

あらすじ

売れない営業マンはある日ゲームの登場人物に転生した。あれ? でもこれって破滅確定のやられ役じゃない?! 領主の父親は横領で牢屋行き。領地は半減。素行不良のせいで領民からは目の敵にされる始末。そういえばうちの村って、ゲーム序盤で魔物に滅ぼされてなかったっけ? チビ、デブ、ブサイクの領主のドラ息子に転生したおっさんは右往左往。でも婚約者が尊いので頑張ります!!

「カクヨム」本作ページより引用

地に足の着いた攻略が心地よい作品

主人公ボルマンのアドバンテージは、ゲーム世界の情報現代社会の知識のみ。チートスキルやとんでも技術無しで逆境に立ち向かっていく様が熱い作品となっています。

ゲームに関する知識は一見メリットが大きいようにも感じられますが、ゲームプレイ時は本来の主人公に沿ったストーリー展開となっているので、役立つのは大まかな歴史の動きや、ダンジョンや敵の情報程度。しかも、ボルマンの活動によって徐々に歴史が動き始め、元々のゲームでは起こり得なかったような事態も起こり始めます。

現代社会の知識で役立つのは、基礎的な科学の知識や、営業で培った交渉術程度でしょうか。よくあるチート転生もので、車や銃器といった工業製品をぽんぽん作っていたりしますが、これについては本作中のボルマンかつ作者さんの心の声を引用させて頂きたいです。

前世の仕事の関係で、金属加工の知識が多少あった分、その手のものづくりチートは早々に諦めた。
仮に形ができても、熱処理で躓くのだ。
誰だ、鉄に焼入れできるなんて言った奴……。
カーボン量の調整とかどうするんだ。
余計な成分の除去は?
焼戻し温度の調整は?
質の悪い鋼なんて、焼き割れ、置き割れ、待ったなしだ。
鍛造だけでベアリングが作れる訳がない。

自分も工業系の研究者ですが、自分の専門については詳しいものの、その他の分野については上っ面の知識しかありません。現代の工業技術はほんと細分化されてしまっていて、1人で全部をカバーするのは不可能です。上にあるように、鉄の焼き入れ処理一つとっても奥が深すぎなのです。

工業改革だ農業革命だとチート気味に展開することなく、主人公ボルマンが自らのポテンシャルをフル動員してがんばる様子は本当に心地よいです。

 

定番ながら芯の通った仲間たち

主人公を囲む仲間たちの魅力にもあふれた作品です。冒頭にも記載の通り、突飛なキャラは登場せずに定番どころを押さえた配置ではあるのですが、各キャラの奥行きが深く愛着を持てるのがよいところです。

ヒロインは清純かつ健気で、婚約相手となったボルマンに尽くします。ただベタベタしているだけでは胸やけ気味なところですが、ヒロインの恵まれない半生もきちんと描かれているため、新しい人生を拓いてくれたボルマンに報いつつ一緒に歩もうとしている様子がよく理解できて、尊く見守ることができます。

また、ボルマンの子分だった脳筋戦士たちについても、モブ役の手下として雑に扱われることなく、しっかりと成長の機会が与えられて仲間として活躍していきます。物語中盤での彼らとボルマンの会話では、転生前のボルマンとの長い付き合い積み重なった思いが感じられて、ちょっとうるっと来るものがありました。

他にも語りたいところはいっぱいあるのですが、気になる方はぜひ本作を読んでください。ボルマンを含めて魅力的なキャラがいっぱいですよ! 間違えても、読んでる途中でキャラと名前が一致しなくなるなんてことは無いです(笑)

 

万人におすすめできる素敵なファンタジー作品です。作品が気に入った方は、続刊の出版を一緒に応援しましょう!

  

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