『Mebius World Online 〜ゲーム初心者の真里姉と行くVRMMOのんびり? 体験記〜』 異世界で人生をもう一度(風雲 空)

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感想とおすすめポイントまとめ

  • ゲーム初心者の真里姉がVRMMOの世界に飛び込み、ゲーム内NPCや他プレイヤーを巻き込みつつ、世界の流れを変えていくお話
  • 効率を求めずに世界を楽しもうとする姿勢や、ゲーム初心者だからこその行動が思いがけない結果につながるのが面白い。各章の盛り上げ方も見事。
  • バランスよく楽しむことのできるVRMMOものであり、広くおすすめできる作品。自分らしく生きる真里姉を愛でつつ、がんばる姿に胸が熱くなる
  • 連載中。108話終了時点でおよそ小説2冊程度のボリューム。
  • 第2回ノベプラ大賞受賞作品、書籍化予定

もしゲーム初心者が最新VRMMOの『Mebius World Online』をはじめたら

風雲 空さんが「ノベルアッププラス」、「小説家になろう」にて連載中の作品です。今年実施された第2回ノベルアップ+小説大賞において、見事に大賞を受賞されました。おめでとうございます!

本作はVRMMOをテーマにしており、ゲーム未経験者である真里姉の奮闘を中心に物語が進みます。ゲームに慣れていないからこそ、見たところ非効率な行動をして強力スキルをゲットしてしまったり、VRMMO内のNPCに対して人と同様に接することで大きな信頼を勝ち取ったりと、ゲーム初心者の設定を上手に生かした展開となっています。

なによりも、真里姉のキャラクターが本当に素晴らしいです。作品序盤で明らかになりますが、真里姉は過去の事故のせいで現実では自由には身体が動かせなくなっており、弟妹から勧められてVRMMOをはじめます。そんな背景と、真里姉の天然さと愛らしさとが相まって、ゲーム内での真里姉のふるまいや選択にしっかりとした重みを与えています。

物語の盛り上げ方も素晴らしく、さすがは大賞受賞作です。現在は第3章の途中ですが、お話としては各章ごとにきちんとまとめられているので、気になる方はぜひまずは第1章まで読了してみてください。真里姉の魅力にはまること間違いなしです!

ノベルアッププラスの本小説ページのトップ絵(nemさん作)も、この作品の雰囲気にぴったりで大好きです。

オススメ度とおすすめしたい人

おすすめ度(108話時点)

★★★★(星4つ、オススメ!)

★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。

おすすめしたい人

VRMMOの世界での人生を真里姉と一緒に楽しみたい人、ゲーム初心者の天然な行動が巻き起こす騒動を見てみたい人、絆が導く熱い展開も好物な人、強く儚くも天然な真里姉を一緒に愛でたい人

あらすじ

私、秋月真里はVRMMO「Mebius World Online」の世界に降り立った。弟妹から勧められて始めてはみたものの、全くのゲーム初心者の自分は何をすればいいのやらさっぱりで…

とりあえず自分のキャラを真里を単純にもじって「マリア」と名付けて、職業も自分のイメージから離れないものに決めた。ゲームのチュートリアル役のAIからは戦士とか魔導士とかをおススメされたけど、自分は運動神経もないし頭もそんなによくないし。やっぱり現実通りが一番だよ、うん。

そんな自分が就いたジョブは「道化師」。糸を操ることのできる職業らしい。街の人ごみを避けて辿り着いた寂れた教会の壁にもたれて、糸であやとりをしていたら「操糸」のスキルを覚えてしまった。念じると糸を自由にくねくね動く。おー、ゲームっぽい!

楽しくて糸で空中に動物や花を描いていたら、教会の子供たちと保護者であるシスターのエステルさんも集まってきた。エステルさんも自分と同じくお姉ちゃんとして色々と苦労しているみたい。ここは人助け、エステルさんに美味しいご飯をたくさん食べてもらえるように一肌脱いでみよう!

主な登場人物

  • 真里(真里姉、マリア)
    本作の主人公であり、ゲーム内では道化師のマリア。まったくのゲーム未体験者だったが、弟妹から強くすすめられてMebius World Onlineを始めた。ゲーム内のNPCにも同じ人間のように接する優しさを持ち、VRMMOの世界を生きることを心から楽しんでいる。
  • エステル
    ゲーム内キャラクターのシスター。教会で孤児の子供たちの面倒を見ているが、援助が少なくて困っている。教会のそばに佇むマリアの様子をみて感じるところがあり、教会での昼食に誘ったことから物語が動き出した。優しく可憐だが、怒らせるととっても怖い。
  • ルレット
    Mebius World Onlineの熟練プレイヤーであり生産職。ルレットの店に飾られたぬいぐるみにマリアが興味を持ったことが縁でマリアの初のフレンドとなった。ルレットのぬいぐるみは、道化師のマリアにとって運命の出会いとなる。

VRMMOの世界で別の人生を生きるということ

異世界転移とVRMMO、ネット小説における大人気カテゴリでもあり、当サイトでも多くの作品を紹介させて頂いています。「異世界」と「ゲーム」ということで舞台として結構違うようにも見えるのですが、設定次第では非常に近しいものになります。

VRMMO側から見た場合の異世界転移との大きな違いとしては、「①命に危険が及ばない」、「②自由に行き来できる」、「③ゲームNPCの存在」あたりかと思いますが、①、②はそれこそ設計次第で、ゲームに閉じ込められて命でデスペナを贖うVRMMOものは定番ですし、気軽に行き来できる設定の異世界ものもよく見かけます。③についても本作のように、NPCが高度なAIで制御されているとしたら、もはや普通(?)の異世界人と変わりません。

いわゆる異世界転移はなかなか現実には起こらないでしょうが、VRMMOがもう少しだけ発達すれば、異世界転移のように別世界で別の人生を歩む選択肢も出てくるのかもしれませんね。きっとそんなに遠くない将来に実現すると思います。

考えてみれば、本で物語を読むのだって、本の中に描かれたストーリーに自分の経験や人生を重ね合わせてわくわくするものでした。TRPGやゲームでストーリーをより主観的に楽しめるようになり、ゲーム性能の向上とともに自由度も上がってきました。まるで異世界転移のようなVRMMOゲームは、その延長の正統進化なのでしょう。

真里姉はメビウスワールドオンラインで自分の人生を歩みなおす

すみません、本作と真里姉の魅力を語るための前置きが長くなりすぎました。

VRMMOに限らず、「RPGゲームをやるぜ!」となった場合、皆さんの場合はどのようにキャラメイクをしますか? おそらく自分の理想の容姿や職業を選ぶか、ゲーム内での成長効率を重視した設定にするでしょう。ゲームが始まったらチュートリアルをちゃちゃっと片づけて、イベントをこなしつつ冒険の旅を続けていくのではないでしょうか。

本作の真里姉の選択は真逆です。現実の自分と乖離しない職業を探し、非力だから「騎士」は無し、信心深くないから「聖職者」もパスといったように絞っていった結果、特に取り柄のない「道化師」を選択します。ログインしてからも人ごみに疲れて、手持ちの糸であやとりを始めてしまう始末。イベント発生も無視して困っているNPC達を助けていきます。

こんな初心者だからこその行動がきっかけとなって、真里姉は大きな力を手に入れて、プレイヤーやNPCたちも巻き込んだ世界の流れに関わっていくことになっていきます。

初読の際には、「すわ初心者のふりをした無自覚天然系の俺TUEEEか」と思ったのですが、冒頭にも書いた現実での状況を理解してから読み返してみると、真里姉が純粋にVRMMOの世界で自分の人生を歩み直そうとしているように感じられて捉え方が大きく変わりました。

ぜひご自身で感じて頂きたいので多くは語りませんが、お話の中の現実世界とVRMMOの真里姉の振舞いをよく見比べると、ぐっとくるポイントがたくさんあります。その一方で、ストーリー自体を重い雰囲気にすることなく、真里姉の明るさと愛らしさを引き出しているのは作者さんの手腕でしょう。

真里姉にはゲーム内でも現実でも心から幸せになって欲しいです!

 

さすがは小説大賞の受賞作、おすすめに間違いなしの完成度です。序盤を読んでみて真里姉のキャラに魅力を感じたならば、ぜひ一緒に応援しましょう!

情景描写も非常に美しく、コミカライズや映像化されたら間違えなく映えそうですよね。

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