『神眼の異端狩人』 読み心地すっきりの「無双」と「ざまぁ」

アイキャッチ森の影
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ぎゅっと要約

  • パーティーを追放された主人公が無双して、元パーティーの凋落をざまぁするお話
  • 短時間ですっきり「成り上がり無双」「ざまぁ」を楽しみたい人におすすめ。ざまぁ入門としても。
  • 連載中(ほぼ終盤)、小説1冊弱のボリューム

分かりやすい勧善懲悪の王道展開をぎゅっと凝縮

雨森あおさんの作品で、正式タイトルは『神眼の異端狩人~役立たずと追放された『分析士』にして『ものまね士』はいきすぎた『眼力』≪レベルMAX!≫と『ものまね』で辺境から最強へ~』です。「小説家になろう」、「ノベルアップ+」にて連載中で、5月頭の掲載開始から1ヶ月弱の現在、物語は終盤を迎えているところです。

作者の雨森あおさんは、『ドラゴンおぢさん。』という作品も同時進行で投稿されており、こちらも軽妙な書き味で面白くおすすめです。『ドラゴンおぢさん。』は設定含めて色々と工夫をこらしているのに対し、本作『神眼の異端狩人』は「無双」と「ざまぁ」のテンプレ成分を抽出して端的にまとめたイメージでしょうか。正式タイトルが「ザ・なろう」ともいえるスタイルなのも分かりやすいです。

ストーリーもタイトルに書かれている通りです。Aランクパーティーを追放された主人公ケイオスがチートスキルで成り上がる一方、元パーティーは凋落してざまぁされるという王道展開となっています。特徴的なのは、小説1冊弱とオンライン小説としては短めの文章量でまとめられている点でしょう。「無双」と「ざまぁ」をくどくしないようにするために、設定や展開に凝るのではなくて、あえて要点を絞って端的にまとめ上げるというアプローチは面白いです。

オススメ度とおすすめしたい人

おすすめ度(36話時点)

★★★(星3つ、良作)

★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。

おすすめしたい人

さくっと短時間でパーティー追放ものを読みたい人、無双成り上がり展開が好きな人、すっきり気持ちよく「ざまぁ」したい人

あらすじ

主人公のケイオスは「分析士」と「ものまね士」の2つの天職を持っているが、活躍が地味で目立たないことが理由でAランクパーティーを追い出されてしまう。

仲間の裏切りを悲しむケイオスは故郷にもどり「魔物ハンター」としての新しい人生を始めるが、その能力で強力な魔物の能力を吸収したことで、大きく飛躍していく。一方のAランクパーティーの元メンバー達は、ケイオスが抜けたことで失敗続きとなり…

主な登場人物

  • ケイオス
    主人公の冒険者。「分析士」、「ものまね士」の2つの天職を持つ掟破りの存在。魔物を「分析」して、「ものまね」することで、強力な能力を習得していく。格好付けだが女性には奥手。
  • エリーシェ
    冒険者ギルドの受付の職員。王都のギルドで働いていたが、偶然ケイオスの故郷の地方支部に転勤となった。ケイオスに思いを寄せて色々とフラグを立てるも、奥手のケイオスに全て折られる日々。

あえてストーリーを凝縮することの難しさ

長編には長編の、短編には短編の良さがあります。ネット小説で名作と言われているものは、文字数にして100万字を超えるような超長編が多いですよね。複雑で込み入った世界観を余すところなく描いたり、魅力的なキャラクターをたくさん登場させたりと、紙面の限界を気にせずに書き続けられるWeb小説だからこそのメリットだと思います。

ただ一方で、超長編は相当の技量がないと途中で中だるみしてしまうことが多く、読者側からすると読むのが辛くなりますし、作者側でも未完の大作となってしまうこともあります。例えば、テンプレの「最強スキルで無双」の場合だと、極論を言えば最強スキルを手に入れた時点で魔王なり世界のシステムなりを倒しちゃえば物語終了なわけですよ。そこを「スキルに時間制限が…」とか「ボスまでの移動手段が…」などなどの障害をつくって遠回りしていくわけです。長編小説ならではの複雑な伏線を回収しつつ。

前置きが長くなりましたが、本作はこういった障害を取り払って、最強スキルでまっすぐ成り上がって、まっすぐラスボスを倒すお話になります。「分析士」と「ものまね士」の技能を使って敵の能力を盗んでいくのですが、ちまちまランクアップするのではなく、一気に最強の座に上り詰めてしまうのが爽快です。もちろん戦闘だけでなく、幕間としてサイドストーリーや恋愛小話も挟みつつ進むので、読み物としてもきちんと仕上げられています。なんだか「無双」「さまぁ」ものを、どこまで端的にまとめられるのかを試したようにも感じられますね。

本筋とは関係ないですが、「ものまね士」というとFF5がまず頭に浮かぶあたりで自分の歳を実感します。そういえば、あちらの「ものまね士」もサブアビリティの組合せで最強候補でした。

気持ちよく「ざまぁ」を堪能しよう!

この物語の爽快なもう一つの点は、首尾一貫して勧善懲悪なところです。

ネット小説のテンプレートともなった「追放からのざまぁ」ですが、追放側が完膚なきまでに「ざまぁ」されるパターンはそこまで多くはありません。ありがちなのは「追放に反対したけど押し切られた仲間」や「だまされて追放に賛成した仲間」が合流してくる流れでしょうか。「追放したのは真の悪に操られたためだった」パターンもよくあります。分かりやすい勧善懲悪は意外に少ないんですよね。

翻って本作では、ケイオスの元仲間のパーティーメンバーは全員どうしようもない悪人で同情の余地はありません。ケイオス不在でAランクパーティーのメッキが剥がれてしまい、とことん凋落した上で思いっきり暴走したところを成敗されます。いやー、これぞ元祖「ざまぁ」という貫録ある流れで存分に堪能することができました。

ストーリーでも勧善懲悪の流れは徹底されており、善き仲間はきちんと報われますし、魔物は一点の曇りもなく魔物です。純粋に「無双」と「ざまぁ」を堪能するのであれば、それがよいのです。

「成り上がり無双」と「ざまぁ」をすっきりさっくり味わうことのできる良作です。勉強や仕事で疲れた心の清涼剤としてもおすすめします。

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