ぎゅっと要約
- 転生者の少年が世界の真実を知るため、錬金術を駆使して地域制圧シミュレーションをするお話
- 努力あり苦労ありの成り上がりものが好きな人、知略や戦略、政略がうずまく人間模様が好きな人におすすめ
- 連載中、おおよそ小説5冊分のボリューム
錬金スキルにダンジョン探索に国家運営まで転生物の魅力が満載
止流うずさんが「小説家になろう」、「ノベルアップ+」で連載中の作品です。「ノベルアップ+」で少し先行して公開されているようですね。止流うずさんといえば、『ソシャゲダンジョン』が既にノベライズされており、『家の納屋にダンジョンがある』などの人気作品を抱える大先生であり、本作は期待の最新作となります。
6歳の少年ユーリが前世の記憶を取り戻すところからストーリーは始まります。大きな流れとしては、前世の知識をもとにスキルを磨いて成り上がるというスタンダードな物語なのですが、その過程が波乱万丈で全く飽きさせないんです。
小説タイトルのとおり錬金術を駆使してバトルや国の開発をしていくことになるのですが、バトル1つとってもダンジョンの単騎行あり、ボスレイド戦あり、国家間の軍隊戦ありと規模が様々で、爽快に蹂躙したかと思えば手痛い反撃を受けたりと、本を読む手が止まりません。これだけ色々な要素を詰め込んで、全てを上手に生かしている作者さんの筆力に脱帽です。
2020年5月時点で225話まで掲載されており、総文字数はちょうど100万字です。これだけの分量にも関わらず、寝る間も惜しみつつ2日で読み切ってしまいました。かぴばー的に間違いなく殿堂入りの1冊です!
オススメ度とおすすめしたい人
おすすめ度(225話時点)
★★★★★(星5つ、殿堂入り!)
★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。
おすすめしたい人
がんばり成り上がりものが好きな人、知略や謀略がうず巻くストーリーを求める人、ハードな国家運営ゲームを愛する人、スキルツリーを進めていくのが趣味の人、人生の相当部分をCivilizationや信長の野望に捧げた人
あらすじ
6歳になると女神からスキルを与えられる国、神国。主人公のユーリはRスキルの錬金術を授かった夜、ブラック企業に勤める30歳サラリーマンであった前世の記憶を突然取り戻す。あらためて周囲を見渡してみると、ここはどうやら崩壊した東京のように見える。そして、錬金術といいスキルといい、何か世界の根本がおかしくなっている。まるでゲームだ。
ユーリは世界に何が起こったのかを知るため、この国で成り上がることを決意する。まず取り組むべきは子供の仕事である勉強から。学友の少女キリルとともに錬金術のスキルを磨き、強力な武具「機動鎧」のレシピを見つけ出したことから神国の幹部から注目されることになる。
忙しくも穏やかな日々、そんな日常はモンスターの「大規模襲撃」により突然終わりを告げる。神国を迫る強力なモンスター群を前に、神国幹部の処女宮(ヴァルゴ)から「じゃあ、今すぐ『起動鎧』作って」とユーリは告げられる。この無茶な丸投げ、まるでブラック企業じゃないか。神国を揺るがすユーリのがんばり物語がここに始まる。生き残り世界の真実を知るため、そしてホワイトな国家を目指すために。
主な登場人物
- ユーリ
主人公の少年。前世はブラック企業のサラリーマンであり、その鍛え抜かれた社畜精神を神国の発展のために十二分に注ぐ。「自分がもう一人いれば」とか考えちゃうあたりが本当に社畜の鏡。リアリストであり戦術家。彼の名言集はビジネス実用書かと思えるほど。 - キリル
本作のメインヒロイン。ユーリと同じ年の少女。学校で同級となったユーリに錬金術のコツを伝授されたことをきっかけに、ユーリのがんばり物語に巻き込まれる。転生者のユーリと違って年齢相応にも関わらず、後ろを着いていけるのが本当にすごい。努力家。 - 処女宮(ヴァルゴ)
神国十二天座がひとり処女宮を表の顔として、その正体は神国の女神アマチカにして転生者の天国千花(あまくにちか)。神国の真の国主であるが、軍事面と経済面がからきしのため、モンスター襲撃によって存亡の危機に瀕していた。ユーリの登場によって軍事、経済、技術が全て解決。その才能が政治面で花開く。
異世界転生で文明発展+地域制圧型シミュレーション
ユーリが転生した世界では、資源やお金に人工を費やすことで、文明や技術のスキルツリーを発展させていくことができます。「石器」しかなかったものが、鉄鉱石の資源を見つけたり鍛冶を発展させたりすることで「鉄器」になるようなイメージですね。そう、多くのゲーマーを睡眠不足にさせた『Civilization』の世界です。ユニークユニットが出現したり、戦闘ユニットにスキルを付与できたりと、Civの世界観が物語の随所にでてきます。ユニット昇進の効果音が空耳で聞こえてしまう…
さらなる特徴として、日本の都道府県をベースとした地域制圧型のシミュレーションゲームにもなっています。主人公ユーリの属する神国は東京都ですが、山梨、埼玉、群馬を軍事強国に囲まれた上、神奈川は強力なモンスターがいて手が出せないと、滅亡感たっぷりな状態からのスタートとなります。こちらはゲームで例えるなら『信長の野望』でしょうか。国家間の同盟・敵対関係が非常に込み入っており、外交面のやり取りも入念に描かれています。
この超有名な2大タイトルのシステムをベースとしつつ、そこに錬金術やダンジョン探索やアイテムドロップなどなど、いわゆる転生ものの定番要素まで多数加わってきます。これらをきちんとまとめ上げて、作品の世界観としてしっかり昇華しているのが、止流うず先生の技術の素晴らしいところですね。掛け値なしに面白いです!
賢くてあくどくて人間味ある転生者同士での知略戦
異世界転生無双は大好物なのですが、主人公の強大なスキルを前にした王様や領主がただ茫然として許しを請うような展開は個人的にどうしても受け付けません。どんなに強力な力をもっていようが所詮は個人、国を率いる立場にある者からすればいかようにも対処できるはずであり、またそれだけの能力を持っていて然るべきはずなのです。
本作はこの点についてもばっちりです。周辺国の国主となっている転生者たちは、自信家だったり狡猾だったり短絡的だったりと、良くも悪くも人間味ある性格をしています。その一方で、ユーリの脅威をきちんと認識したあとは、「対抗同盟を組む」「他国を併呑する」「諜報で暴動を扇動する」と、国としてよく考えられた対応策を取ることができます。また、神国においても増大するユーリの力が原因で内部闘争が起こったりもします。人間社会としてとっても健全ですね! 序盤はポンコツに見えたアマチカ様も政治家としては一流で、ちゃんとユーリ君を掌で転がしています。
そんな苦境の中で生き抜くユーリ君、ビジネス書もかくやとの名言をたくさん語ってくれています。その中から君主に関するものを一つ抜粋、自分もかく在りたいものです。
『外交問題になるから動けない、と考える者は君主の資質を持たない。動けない、ではない。であるならばそれを回避して動けるようにするのが君主というものだ。その力があるのが君主なのだから。』
世界崩壊の原因究明はまだまだこれから
冒頭の紹介でも少し触れた通り、どうやら世界は一度崩壊しており、何者かがスキル制ゲームのような仕組みへと作り替えたようなのです。錬金術を使えば化学法則を無視して物が創り出されますし、「火」や「電気」といった存在も物理法則からは外れてしまっています。
つまり、転生者たちは何者かによって変質させられた地球上で、「文明発展+地域制圧型ゲーム」に強制参加させられていることになります。ユーリはこの世界に在り方を気持ち悪く思いつつも、未知なる法則をフル活用して立ち回り、世界の謎に迫っていくことになります。
本作は225話を迎えてまだまだ中盤の雰囲気であり、神国の発展拡大も、この世界の謎の解明もまだまだこれからです。今後どのように物語が展開するかとても楽しみです。
世界観もストーリーもキャラクターも満点の大作、『Civilization』や『信長の野望』が大好きな人は絶対に読んでみてください。完結までついていきます!