感想とおすすめポイントまとめ
- 主人公である澪亜が異世界で聖女の力を手に入れたことで、現実世界の生活を好転させていくお話。
- ほのぼのかつ尊い澪亜のキャラクターに支えられた爽やかなざまあが魅力。もふもふもあります。
- 連載中。56話終了時点でおよそ小説1冊強のボリューム(約20万字)
正統派おっとり聖女が現実世界に降り立つ
四葉夕卜さんが「カクヨム」にて2020年9月から連載中の作品です。四葉夕トさんの作品としては、本作と平行して更新されている『転生大聖女の異世界のんびり紀行』も本サイトでレビューさせて頂きました。『転生大聖女』は書籍化決定とのこと、おめでとうございます! 本作も期待が高まりますね。
さてさて、本作も聖女もの、元お嬢様の澪亜が主人公です。裏切りにあって家が没落したことに加え、丸々と太った容姿も原因となって、酷いいじめを受けていました。そんな澪亜がひょんなことから異世界で「聖女」の力を手に入れて…
異世界と現実世界を自由に行き来できる設定であり、どちらかというと現実世界での澪亜の日常と成長にウエイトが置かれているのが特徴です。異世界で聖女としての力がレベルアップして、結果として現実での生活が好転していくという正のスパイラル。現実世界で聖女としての超常的な力を振るうわけでは無く、異世界での経験や自信を糧に復活を遂げていくのも魅力ですね。
清らかでおっとりとした澪亜の雰囲気に加えて、もふもふや友人をはじめとした澪亜を取り巻くキャラも皆優しく、気持ちよく読み進めることのできる作品です。
おすすめ度(56話時点)
★★★★(星4つ、オススメ!)
★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。
あらすじ
没落した名家の娘である平等院澪亜は「太っている」「貧乏」ただそれだけの理由で酷いいじめを受けていた。
人生に絶望していると、ふとしたきっかけで触れた祖母の姿鏡から異世界に引きずり込まれる。
転移した先は古ぼけた神殿。澪亜は礼拝堂でピアノを見つけ、せっかくだからと弾き始めた。すると脳内に不思議な声が響いた。
「――聖女へ転職しますか?」
澪亜はその瞬間から聖女に転職し、レベル、スキル、魔法を手に入れた。
そこから彼女の人生が激変する。ダイエットに成功して綺麗になり、異世界では聖女の力で人助け。現実世界ではピアニストに読者モデルと引っ張りだこ。
「聖女さま万歳!」なんだかすごい崇拝されてる?
「澪亜さまサインください!」恥ずかしいのでこっそりいたしますね・・・//
どんなに周囲がチヤホヤしても澪亜は感謝の心を忘れずに人助けに精を出し、いじめっ子たちは勝手に自爆。気づけば没落した家も再興していき――
この物語はゲーム知識ゼロの心優しきお嬢さまがゲームっぽいチートスキルを手に入れた、無自覚系シンデレラストーリー。
「カクヨム」本作ページより引用
爽やかな「ざまあ」を楽しもう!
知人の裏切りにあって没落してしまった澪亜の家、両親を亡くした澪亜は祖母と古びた家に暮らしています。澪亜はその太った容姿のせいで学校でいじめにあい、祖母も失明してしまっておりと全くもって八方ふさがり…
そんな状況を聖女の力で克服していくことが、本作のひとつの大きな目標となっています。
身体に蓄積されていた力が解放されたことで澪亜の体型はスリムになり、誰もが振り返る美少女となります。そして回復魔法によって祖母の目も快復し、孫の活躍をネットに上げるようなアクティブお婆ちゃんに。
そんな澪亜の活躍の裏で、いじめっ子たちに対する「ざまあ」を楽しむことができるのですが、澪亜自身が主導的に追い込んでいくわけではなくて、澪亜のあまりの尊さと天然さの前に華麗に自爆していく感じですので爽やかな気分で読み進めていくことができます。
ドロドロではなくて清々しく読めるざまぁを求めているかたにはぜひおススメです。
目に浮かぶ情景の鮮やかさも魅力
聖女の力の源は「ヒカリダマ」と呼ばれる光の精霊のようなものであり、澪亜はピアノ演奏を聴いたヒカリダマたちに認められたことで聖女となることができました。
そんなヒカリダマの力を使うときには、澪亜はイメージしやすい「音符」の形として使うのですが、これがまた読者にとっても情景をイメージしやすくて素敵なのです。例えば、暗い森の中を魔物に向かって飛んでいく音符たち、荷物持ちとして頑張って色々なものを運ぶ音符たちと、ただの「魔法」として表現するよりもずっと鮮やかな印象を残してくれます。
『転生大聖女の異世界のんびり紀行』を読んでいても感じましたが、文章で美しくオリジナリティあるイメージを想像させることがとても上手な作者さんだと思います。マンガや映像でもぜひ観てみたいですね!
ネット小説らしさを詰め込みつつ気持ちよく読むことのできる、多くの人におすすめの作品です!
一緒に澪亜さんの尊さを見守っていきましょう。
四葉夕トさんの別作品のレビューはこちらです。