ぎゅっと要約
- 尽くしたパーティーに捨てられた空間魔法使いが、即最強となって元パーティーの凋落をざまぁする話
- とことん落ちぶれる元パーティーや次々登場する悪者に対する「ざまぁの宝石箱」を愛でたい人
- 連載中(現在53話)、おおよそ小説1冊弱のボリューム
開始直後からの即無双展開とどこまでも続くざまぁ
ボルトコボルトさんが「カクヨム」、「小説家になろう」に掲載中の小説で、正式タイトルは『Sランクパーティーに捨てられたポーターは実は最強の空間魔法使いだった。~虐げられた世界に復讐して『ざまぁ』するんだぁ!~』です。4月下旬に投稿がスタートし、6月12日時点のカクヨム月間ランキングで5位と人気の作品です。
物語の導入は「高ランクパーティーざまぁもの」のテンプレであり、ポーターとしてSランクパーティーに貢献していた主人公ユウマが、ダンジョンの深部で突然捨てられてしまうところから始まります。
特徴的な点は、ユウマが自身の空間魔法で即最強になってしまう展開の早さと、元パーティーの完膚なきまでの落ちぶれっぷりですね。ありがちな「ざまぁ」ものではメインストーリーは主人公の成り上がりで、幕間的に元パーティーの転落の様が語られることが多いかと思いますが、本作では両者とも同じくらいのウエイトをおいて描かれています。どちらかというと、主人公が最強すぎるせいで、元パーティーの完膚なきまでの凋落ほうが強く印象に残るくらいですね。
「ざまぁ」ものにふさわしく、元パーティー以外も小悪党揃いなので、ひたすらざまぁしたい人にはおすすめの作品となっています。
オススメ度とおすすめしたい人
おすすめ度(53話時点)
★★★(良作)
★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。
おすすめしたい人
とにかく「ざまぁ」を徹底的に楽しみたい人、元パーティーの圧倒的な転落を眺めたい人、チート魔法で即最強なハーレム系主人公に理解のある人、ややダーク展開でも大丈夫な人
あらすじ
空間魔法使いの主人公ユウマは、Sランクパーティー「焔の剣」のポーター兼雑用として身を粉にして働いていた。ところがある日、宝箱からアイテムバックが見つかったことから、ポーターは不要としてダンジョンの奥底で捨てられてしまう。
ダンジョンから脱出を試みるユウマだが、モンスターに追われ落とし穴に落ちてしまう。一面のスライムに囲まれて絶体絶命となるものの、空間魔法でスライムの核を収納すれば倒せることに気づいて状況は一変、山積みのスライムを倒してレベルアップに勤しむ。さらにブラックドッグのクロドを仲間に加えて、ユウマは一路地上を目指す。ダンジョン内で迷い続ける「焔の剣」の元パーティーメンバー達を横目に眺めつつ…
主な登場人物
- ユウマ
主人公の冒険者。転生者設定もあるが活用はあまりされない。空間魔法使いであり、その圧倒的なチート性能で伝説の魔物であろうがダンジョンのボスであろうが圧倒する。ハーレム系主人公の適正も持っており、周囲を常に女性冒険者に囲まれることになる。 - クロド
種族ブラックドックで体長1m程度の大型犬。ダンジョン内でユウマに出会い、その空間魔法の才能を見込んで従魔となる。物理攻撃兼ユウマの乗り物役。普通にとっても強い。
空間魔法が最強過ぎる件
ざまぁもののお約束として、主人公は元パーティーに捨てられた後にダンジョンの奥底に迷い込み、なんらかのイベントを経て超レベルアップかチートスキルを身につけるという序盤の展開があります。捨てられた後に一気にパワーアップすることで気持ちよくざまぁできるようにするための流れですね。
ただし、本作でユウマが目覚める空間魔法は正しくチートスキルで、伝説レベルのモンスターであっても瞬時に倒してしまうほどです。しかも、心臓部の魔石を収納するだけという非常に地味な絵で… 空間魔法はこの世界では外れスキルと書かれていますが、絶対そんなことないでしょう、うん。
美麗な剣技があったり派手な魔法が飛び交ったりということはありませんので、モンスター戦はお肉を確保する作業として端的に語られます。何しろボス戦の章題からして『第33話 ゲリュオンと戦った』、『第34話 ゲリュオンを倒した』、以上!という潔さですからね。
これも「ざまぁ」に集中させるための作者さんの憎い心遣いに違いありません。
次々に登場するバラエティに富んだ「ざまぁ」対象
無双描写はあっさりめということで、読者が心ゆくまで楽しむべきは「ざまぁ」です。
パーティー戦力外通告もので確定のざまぁ対象といえば元パーティーメンバー。陰からパーティーを支えていた主人公を戦闘力が足りないとしてばっさり切り捨てて、クエストが失敗続きになってしまって逆恨みするまでが定番ルートですね。追加対象として、元パーティーのリーダーを贔屓している街の権力者や冒険者ギルド受付嬢が加わるパターンも見かけます。
翻って本作、まずは元パーティーの転落っぷりが半端ないです。詳細は本作を読んで頂きたいと思いますが、パーティーランクが落ちるのみならず人間的にもひどいことになっていきます。53話時点では、ユウマとは軽く接触したのみで本格的なざまぁには至っていませんので、今後どこまで転落して最終的にどのような決着がつけられるのか楽しみです。ただし、かなりダークな展開もあるので苦手な人は注意して下さい。
さらにストーリーが展開されるのにつれて、ざまぁ対象が追加されていくのも本作の特徴だと思います。サブ定番のギルドの受付嬢のみならず、ダンジョン探索中に小悪党の冒険者に絡まれたり、傲慢な商人に呼び出されたりと、まるでユウマの才能であるかのようにざまぁ対象が次々と寄ってきます。まさに「ざまぁの宝石箱」ですね!
ざまぁ対象の数が多くなった分だけ、それぞれの人物の描写が薄くなっている感は否めないですが、背景を書く価値もないような悪人はごまんといるわけで、「ざまぁ」を色々な角度から集中して楽しむためにはこれでよいのだと思います。
めくるめく「ざまぁ」を満喫したい、ざまぁフリークの方におすすめの作品です。ダークめな展開が好きな方であれば言うことなしです!