『黒凪のダンジョンマスター ~不適合スキルで海賊ライフ~』 イカダから始まる大海原ダンジョンライフ(迷井豆腐)

sailboat
スポンサーリンク

感想とおすすめポイントまとめ

  • 大海原に浮かぶイカダの上にダンジョンマスターとして転生してしまった主人公の物語
  • ダンジョンものの定番の設定を上手く生かし、逆転の発想でイカダでのダンジョンライフを満喫しているのが面白い
  • ダンジョンものが好きで、安心して読める変化球を味わってみたい人におすすめ
  • 連載中。107話終了時点でおよそ小説2冊程度のボリューム。小説版が発売中

イカダという名の移動型ダンジョンにダンマス降臨す

前の投稿に続き、迷井豆腐さんの作品をレビューします。「小説家になろう」に投稿の作品で、2020年1月から連載がスタートされています。書籍化もされており、小説が発売中となっています。

本作は自分の大好物のダンジョンものです! 最大の特徴は主人公の転生先が海上に浮かぶ一艘のイカダであること。小さなイカダをダンジョンとして、その上にダンジョンマスターがそこに鎮座している絵はなかなかにシュールで新しいと思います。

そうしてイカダではじまるダンマスライフですが、ダンジョンものでお決まりのDP(ダンジョンポイント)のシステムがイカダ生活と意外に相性がよいのが面白い。ダンジョン内に呼び込んだ敵を倒してDPを獲得し、DPを使用してダンジョンを拡張していくのがダンジョンものの定番の流れですが、海にはお魚がいっぱい、イカダで移動して釣り続ければDPもがっぽがっぽというわけです。作中でも突っ込まれていますが、それってもうダンマスというよりは漁師では…

イカダダンジョン以外は基本的には王道展開であり、個性豊かな女性キャラたちに囲まれつつ、着々とダンジョン拡張を進めていきます。視点が主人公固定で進むのではなく、たまに仲間や敵に切り替わることがあるのも良いアクセントで、テンポよく読み進めることができると思います。

ダンジョンものの愛好者で、ちょっと変化球を楽しんでみたい人にはおすすめの一作です。

ノベライズされた書籍はこちら

おすすめ度(107話時点)

★★★★(星4つ、オススメ!)

★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。

あらすじ

世界の大海原のイカダの上に記憶喪失で目覚めたウィル。だけど、彼が持つのは海では役に立たなそうなダンジョンマスターのスキルのみ。いきなり無理ゲーなサバイバルになるかと思いきや、ダンジョンマスター職の特典で召喚した悪魔メイド・クリスにも助けられ、DP(ダンジョンポイント)を貯めて使えば何でも買えると判明! ポイント貯蓄のため、釣りメインの洋上生活を開始する。すると、購入したゴブリンは海に適応したゴブリンクルーに進化し、イカダは面積を拡張して立派な船になり、自由すぎる発想でダンジョン(?)を発展させ始める。そこに奴隷船が来襲! 大切な仲間たちを守るため、彼は海賊としても第一歩を踏み出すこととなり―――!

「小説家になろう」本作ページより引用

定番のダンジョン設定を逆転の発想で活用する

ダンジョンマスターが何故かイカダに乗って海上にいる。

この前代未聞の状況を熱く的確に語ってくれている敵キャラの台詞があったので引用させていただきます。作成されたダンジョンから魔物が湧き出すため、本作の世界ではダンマスは「魔王」と呼ばれています。

「しかし、しかしだ。どんなに世界を揺るがした魔王でも、それらは陸の上でしか発見されてこなかった! 自らの領土を海とした者などいない! 海の上には城なんて造れんからな! だが、奴の城はこの船だと!? 領土は海だと!? そんなもん聞いたこともないわ、あの馬鹿者がっ! 奴を駒とした神も、相当気が触れておるっ! ありえん、ありえーん!」

ところがどっこい、ダンジョンもの定番設定を見返すと海上での船生活はやっぱり相性がいいんですよね。冒頭で書いたDP獲得手法だけでなく、DPを使えば海上でも無限に物資調達ができます。イカダ単体では防御面に若干の不安があるものの、強そうな敵が来たら逃げちゃえばいいわけですし。

作中では更にダンジョン周辺の環境を調整する機能も活用し、平時は快晴で釣り三昧、交戦時には濃霧で回避アップと、イカダダンジョン無双を楽しめます。

安定した展開、神様たちの更なる暗躍に期待

斬新な初期設定に対して、ストーリー展開は極めて王道をいきます。

仲間に関しては、瀟洒な女悪魔メイドにはじまり天然系女戦士獣人の姉弟と、序盤から定番どころでしっかりと固め、召喚したモンスターたちも進化やユニーク化によって着実に強化されていきます。漁師業で稼いだ潤沢なDPを注ぎ込むことで、ダンジョンという名のイカダもぐんぐん成長しており、文字通り順風満帆といったところですね。ちょっと刺激が少ない気もしますが、安心して読み進めることができます。

今後の展開の注目ポイントは、主人公たちをこの世界に転生させた「神様たち」の動きでしょうか。プロローグで触れられているとおり、とある神様の駒として主人公は転生させられました。他の神様も駒として転生者を抱えており、いわば神様間の代理戦争として転生者同士で争う展開となっているのです。

この神様たちですが、主人公担当神はもちろん、その他の神様たちも癖が強そうな個性的なキャラばかり。現時点ではあまり表立っては動いていませんが、今後のストーリーでの暗躍が楽しみです。

大好物のダンジョンもの、楽しく読ませて頂きました。

ダンジョン好き、開拓好きであれば読んで損のない秀作だと思います。続きを楽しみにしています!

 

迷井豆腐さんの別作品もレビューしています。

タイトルとURLをコピーしました