感想とおすすめポイントまとめ
- 生命の危機に瀕して強大な能力に目覚めた主人公が、世界最強へと上り詰めていくお話。
- 最強の天職を得たことで、レベルアップごとに大きく成長して世界が広がっていくのが最高に気持ちいい!
- ローファンタジーものとして万人におすすめの作品。スキル成長ものが好きな人にはど真ん中なはず。
- 連載中。133話終了時点でおよそ小説3冊程度のボリューム(約50万字)。書籍化予定!
レベルアップのカタルシスを存分に味わえる物語
笠鳴小雨さんが「小説家になろう」、「カクヨム」にて2020年8月より連載中の作品です。連載初期には1日2回ペースで更新をされており、圧倒的ボリュームの投稿をリアルタイムで楽しみにしておりました。最近の定期的な更新も嬉しい限りです!
作者の笠鳴小雨さんは、同じくなろうに投稿されていた『あの日地球にダンジョンが出現した』がノベライズ、コミカライズされています。本作も書籍化が決定されたとのこと、おめでとうございます!
本作の舞台は、世界中にダンジョンが生まれ、人々が「天職」とよばれる能力を持つ世界。主人公のテンジはダンジョンに挑む「探索師」の卵ですが、能力に恵まれずに荷物持ちに甘んじています。そんなテンジが、思いがけない強敵との遭遇、瀕死の戦いを経て「特級天職」とされる超強力な能力に目覚め…
よくある能力チートものとは異なり、「特級天職」といえども初期能力が低いのがポイントです。加えて、強力な天職のためレベルが上がりにくいこともあって、「特級天職」を得てもテンジの苦労は続きます。ただし、その分だけ1つのレベルアップの恩恵が非常に大きく、一気にできることが広がるカタルシスは最高の一言。成長のバランスが絶妙で、とても気持ちよく読み進めることができます。
ローファンタジーものとして万人におすすめでき、特にスキル成長ものが好きな人にはたまらない作品となっています!
おすすめ度(133話時点)
★★★★★(星5つ、名作!)
★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。
あらすじ
少年、天城テンジは貧乏な青年だ。日々の支出や両親の残した借金7000万を返す目的で、危険だが時給は高いダンジョンの”荷物持ちアルバイト”を生業としていた。
そんなある日のこと。中規模攻略隊(レイド)の荷物持ちとして参加した御茶ノ水ダンジョン攻略で、構造変革が発生し、彼らの出口ルートを塞いでしまう。二週間も経つと食料も少なくなり、参加者が徐々に死に始めていく。
誰もが疲弊していた戦闘中。無能な荷物持ちとして食料を消費していたテンジは、何者かに生贄に選ばれ、モンスターの前に置き去りにされてしまう。
「あぁ、僕にもっと力があれば」
死を意識したその時、テンジは世界最高位の能力【特級天職 獄獣召喚】に目醒めた。才能もなくお金もなかった青年が、規格外の地獄獣を使役し、地獄の王としての道を歩み始める――。
「小説家になろう」本作ページより引用
急加速していく成長を一緒に楽しもう!
冒頭でも紹介した通り、本作は成長の楽しさを主人公テンジと一緒に味わえる作品です。
テンジは自らの能力を伸ばすことに余念がなく、「特級天職」を手に入れる前から努力を続けていました。覚醒してからはまさに水を得た魚のごとく、レベルアップできる環境を求めてダンジョンに籠り続けます。
そして苦労の末のレベルアップの結果、「特級天職」の強力なスキルが徐々に解放されていきます。スキルの能力を検証して活用方法を考えて、次のレベルアップを目指して…と、スキルものや成長もの好きにはたまらない展開が続きます。
この成長のテンポが非常に上手く調整されているのが、本作の一押しポイントです。強力なチートスキルをテーマにした作品では、序盤から飛ばしすぎて出オチ気味になってしまったり、能力アップがコンスタント過ぎて冗長になってしまったりするパターンに陥りがちですが、こちらの作品では指数関数的に巧みにスキル能力を向上させていくことで絶妙のバランスに仕上げられていると感じました。
レベルアップ時に定番の取得スキルチェックに関してもマンネリにならないように上手く工夫されており、気持ちよく読み進めるのを後押ししてくれます。
テンジを囲む仲間たちと世界の移り変わり
章ごとのストーリーの切り替えがしっかりとしており、テンジが荷物持ち~特級探索者の卵~能力覚醒と成長するごとに舞台が大きく切り替わっていく点も本作の特徴です。特定のヒロインキャラも存在しないため、テンジ以外の登場人物を含めた世界ががらっと変わるんです。
この設定のおかげで、テンジの成長だけではなく、その時々の仲間たちや共に挑む探索がより魅力的になっていると感じました。やがて最強系のスキルものの場合、どうしても周りのキャラとのバランスを取り続けることが難しく、主人公とヒロイン以外の存在が薄くなりがちですが、本作は舞台ごと切り替えてしまうことで上手く折り合いがついています。自分も物語序盤のギルド試験のパーティーメンバーが好みで、しっかり印象に残っています。
ネット小説には比較的珍しく、俯瞰的な視点で滔々とストーリーが語られるのもポイントですね。こちらも重心がテンジに寄りすぎるのを防いで、物語全体を輝かせることに一役買っていると思います。
ストーリーは佳境に差し掛かりつつあり、読み始めるのに良いタイミングだと思います!
とても面白い作品ですので、ぜひ多くの方に読んでもらいたいです。書籍化も楽しみにしています!