『異世界報道官 佐伯伊月の事件簿』 不屈の記者魂で異世界の難事件に挑む

アイキャッチ記者セット
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ぎゅっと要約

  • 異世界転移した女性記者が様々な事件に巻き込まれ、その記者魂で解決に導くお
  • ファンタジー世界を舞台にした記者・探偵ものに興味のある人チート無しでの推理戦に興味のある人におすすめ
  • 連載中、53話終了時点でおおよそ小説1冊弱のボリューム

女性記者がファンタジー世界で取材を敢行します!

「ノベルアップ+」、「小説家になろう」で絶賛掲載中の青井きりんさんの作品です。5月頭に掲載がはじまり、現在は序盤の佳境に差し掛かったあたりでしょうか。短いスパンでサクサク更新されているので、続編を日々楽しみにすることのできる作品です。

作者の青井きりんさんですが、公開プロフィールを拝見したところ、アニメの脚本やソシャゲのシナリオを手掛けられているシナリオライターさんとのことでした。著名な作品にも携わっていらっしゃるようですね。本作はストーリーの展開のさせ方や各話の区切り方が非常にこなれており、その手腕をいかんなく発揮されていると思います。

本作は異世界に転移してしまった女性記者の伊月が様々な事件と向かい合う物語です。小説タイトルは「報道官」となっていますが、取材から記事作成から報道まで全部を一手に引き受ける、週刊誌の記者さんのイメージが近いと思います。特筆すべき点はチート能力で活躍するのではなく、記者としての能力で立ち向かっていく点ですね。「異世界」+「記者」の時点で結構なマイナージャンルだと思いますが、そこに「チート無し」まで加わって唯一無二の作品となっています。

オススメ度とおすすめしたい人

おすすめ度(53話時点)

ふきだし:★★★★(星4つ、おすすめ!)

★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。

おすすめしたい人

ファンタジー世界だからこその事件簿を見てみたい人、探偵物や推理物の好きな人、オリジナリティーあふれる小説の読みたい人、チート無しの実力で頑張る物語に惹かれる人、猫耳好きな人

あらすじ

主人公の佐伯伊月は売れないオカルト雑誌の出版社に勤める女性記者。ところがある日、魔女マリベルによって異世界アマルガムに出版社のビルと同僚とともに召喚されてしまう。マリベルはオカルト雑誌のファンタジー色あふれる空想記事を真に受け、執筆した記者たちを歴戦の冒険者と勘違いして呼び出してしまったのだった。

誤解に気づいたマリベルが語るには、伊月たちを元の世界に戻すには魔石の魔力が足りず、補充のためには「人の心を動かすこと」が必要らしい。突如現れたビルの調査にあらわれた騎士団を前に、マリベルは言語翻訳スキルと収納魔法を伊月さちに与えて姿を消してしまう。

この異世界アマルガムで生き抜くために何よりまず手に職をつける必要がある上、人の心を動かして魔力をためるためには記者の仕事は正にうってつけ。チート能力もスキルもなく、記者の腕一本だけでの異世界成り上がり物語がここにはじまる。

主な登場人物

  • 佐伯伊月(イツキ)
    主人公の女性記者。この小説はすべてイツキの一人称で語られている。記者としての腕は確かで、異世界アマルガムの地で起こる事件を、その聞き込みと推理の能力で解決していく。ただしチート能力はないので、戦闘方面はからっきし。
  • マリベル
    ドジっ子系魔女。ただし年齢は400歳。魔法の腕は超一流だが、なにかと問題を起こすトラブルメーカー。召喚後しばらくはイツキ達の前にはしばらく姿をあらわしていないが、きっとまた活躍の場があるはず。
  • ニーナ
    アマルガムに住む獣人の女性。トラブルに巻き込まれたイツキを助けたことから、友好を深めていく。商会のガードを勤めており、戦闘能力は非常に高い。

ファンタジー世界に記者が存在することの面白さ

記者の仕事を端的に言うと、対象となる人や事件に関して「取材」し、得られた事実を「編集」した上で、「報道」することになります。今はスマホさえあれ簡単に全世界に向けて情報を発信できますから、誰もが記者になれる時代なんだと思います。

ただ一方で、記者の仕事をメインとして取り扱った作品となると、Web小説だけでなくマンガやドラマまで含めたとしても、あまり数は多くないのではないでしょうか。これはおそらく、「取材」と「推理」に「答え合わせ」という記者と似た業務構成を持つ、「探偵」ものが大人気だからではないかと思います。興味深い事件や複雑なトリックに立ち向かうことをメインに据えるのであれば探偵で必要十分であり、報道までが仕事の記者となると社会色が出てきてしまって純粋に娯楽として楽しみにくいのではないでしょうか。

ところが、舞台がファンタジー世界となると話が違ってきます。まず、一般庶民は情報を手に入れること自体が難しい世界ですから、記者が報道を通して事実を知らしめることができるだけでも、世の中の在り方自体を変える大きなインパクトになります。「人の心を動かすことで魔力を貯められる」という設定が上手くスパイスになっていますよね。

加えて、異世界であるから取材対象がそもそも面白い。領主から奴隷まで様々な身分の人がいたり、獣人などの異種族もいたりしますので、現実世界の読者にとっては単純な取材であっても情報満載なわけです。逆に異世界住人からしたら、取材と称して身分も種族も気にせずに聞きまわっているイツキの存在は興味深く描かれることでしょう。

現代の普通の記者が異世界にいるだけで面白い舞台が整うという仕掛けは、作者さんが世界観を考える上で狙ったポイントではないかと思います。

チートが無いからこそ舞台が魅力的になる

異世界転移物と言えばチートスキル。与えられた強力無比なスキルを使って無双したり、一見大したことないスキルを使いこなして最強を目指したりと、Web小説の一大勢力ですよね。自分も大好きです。

ただし、チートスキルを登場させた場合、ストーリー展開の多くがスキルを中心として進むことになるため、描きたい世界観や人物がある場合にはデメリットになります。スキルの存在が大きいので、その他の要素を霞まずに書き上げるのが難しいということです。

本作ではイツキはチートスキルを持たずに、ペンと記者魂のみで事件に立ち向かいます。実際にはマリベルから収納魔法をもらっていたり、謎仕様で出版社ビルの設備を使えたりもするのですが、少なくとも現時点ではストーリーの辻褄を合わせることを目的とした設定であり、本格活用して異世界で成り上がろうという方向にはなっていません。

そのことが「現在の記者が異世界で取材を敢行する」という、この小説の世界観の面白さを際立たせ、イツキの一人称でストーリーが語られる形式も相まって、オリジナリティーあふれる作品に仕上がっているのだと思います。

『異世界転移チートで記者イツキがペン一本で成り上がる』などという作品が仮にあったとして、「ペンを握ると姿を消せるスキル」とか「記事を書くほどペンの攻撃力が上がるスキル」とかを設定してしまうと、そのスキルをいかに活用するかがストーリーの主軸になってしまって、主人公が記者やイツキである必要はなくなってしまいます。面白スキルでの一発ネタとしてはいいのですが、せっかく魅力的な世界を作り上げたのであればもったいないのです。

今後ますますスケールが大きくなる事件に期待!

ストーリーは53話現在で、イツキがはじめて取り組んだ事件が解決に向かうところで、ちょうど序盤が終わるタイミングだと思います。ほぼ毎日更新を続けてくださっているのも一押しポイントですね。ストーリーの佳境では、投稿をついつい何度も確認してしまいました。

イツキ達は異世界アマルガムに根を下ろし、これからますます大きな事件に巻き込まれていくのでしょう。

まだ顔見せ程度にしか登場していない魔法やモンスターといった異世界ならではの要素が、今後の事件やトリックにどのように活用されていくのかも非常に楽しみです。今後のイツキの更なる活躍に期待しています!

普通の記者がファンタジー世界に転移して、記者魂をもって事件に立ち向かうというオリジナリティーあふれる作品です。事件解決パートは伏線もしっかり書き込まれていますので、推理ものとしてもオススメです!

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