ぎゅっと要約
- 大学院生の理系女子たちが食材や調理に関する科学的な解説を加えつつ、深夜の大学で美味しい夜食をつくるお話
- 料理に関する科学的な豆知識を知りたい人、理系の院生活が懐かしい or 知ってみたい人におすすめ
- 連載中、第26話終了時点でおおよそ小説1冊分のボリューム
- 2020年6月26日よりコミカライズ開始!
リケジョによる科学的見地からのお料理解説
神岡鳥乃さんが「ノベルアップ+」、「小説家になろう」などのオンライン小説投稿サイトにて連載中の作品です。第1回ノベルアッププラス大賞の最終選考作品として選ばれ、6月26日からはコミカライズが開始予定と、注目度が急上昇中の作品です。
「異世界料理もの」に関するWeb小説は数ありますが、こちらは現実世界を舞台として理系大学院の院生である理系女子たちが料理をするお話となります。女子が料理というとキラキラしているイメージですが、そこはリケジョ。研究で泊まり込み中の深夜の大学にて、科学的な視点から食材や調理方法について会話を交わしつつ夜食をつくっていきます。
その豆知識の量とレベルはかなりのもの。自分は結構な蘊蓄好きを自負しているのですが、たくさんの新規ネタを豆知識ノートに書き写させて頂きました。また、理系院の学生生活の様子についても非常に生き生きと現実に即して描かれており、自身の院生時代のことを久しぶりに思い出しました。自分の夜食はコンビニ弁当でしたが(笑)
なお、やや百合要素も含みますが、ストーリーを展開しつ様々な料理をつくるためのエッセンス程度ですので、特に適性がなくても大丈夫だと思います。
料理に関する理系チックな豆知識を知りたい人はもちろん、理系の大学院生の生態に興味のある人にもおすすめの作品です。また、料理ものとの相性が抜群であろうコミカライズ版にも期待しています!
オススメ度とおすすめしたい人
おすすめ度(26話時点)
★★★★(星4つ、オススメ!)
★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。
おすすめしたい人
料理ものを愛する人、サイエンスに基づいた料理に関する蘊蓄の造詣を深めたい人、調理時のひと手間の作業の理由を知りたい人、理系院生の生活が懐かしい人または興味のある人
あらすじ
深夜も大学で研究に励むうららは、夜食のカップラーメンのお湯を沸かそうとしてポットが故障していることに気づく。お湯を調達するために構内のキッチンに向かったところ、夜食にハンバーグをつくろうとしている氷彗に出会うのだった。
ハンバーグにはひき肉以外にも様々な材料をつかう。なぜパン粉や玉ねぎ、塩を混ぜて捏ねるのか疑問を口にしたうららに対して、氷彗は科学的な知識に基づいた理由を生き生きと語る。出来上がったハンバーグを美味しく頂いた2人は、明日もまた一緒に真夜中の夜食をすることを約束するのだった。
主な登場人物
- 塔山うらら
本作の主人公その1。博士課程在籍の理系学生で、研究のために大学に深夜まで残る毎日を送る。自身の料理の腕はからきしで包丁を使うことすらあやういが、美味しい料理を食べることは大好き。料理にまつわる様々な疑問を氷彗にぶつける。 - 鳥見川氷彗
主人公その2。修士課程の学生だが、実験装置の空いている深夜に研究を進める毎日を送る。大学に据え付けのキッチンで夜食を作っていたところ、うららに出会う。引っ込み思案な性格で友人も少ないが、料理が関わると途端に積極的になる。「そこ、気になりますかっ!」
リケジョによる科学視点からのお料理解説
料理に関するサイエンスにもとづいた豆知識が詰まった作品です。
料理の解説本を読むと、「なんでこんなことをしなきゃいけないんだろう」という作業が色々とあると思います。例えば、生魚はキッチンペーパーで水気をよく吸うこととか、肉じゃがには砂糖だけでなく味醂も加えることとか書かれてますよね。そんな「何故」を科学的に解説してくれるのが本作の特徴です。専門的な単語もぼちぼち出てきますが大丈夫。うららと氷彗のやりとりを介することで、理系以外の人にも分かりやすいように優しくかみ砕いて説明してくれています。
うんちくは食材にも及びます。魚の脂肪が肉に比べて固まりにくいわけや、夏野菜が鮮やかな色をしている理由などなど、もし気になるようであればぜひ本書を読んでみることをおすすめします。個人的には、「牛乳が白いのと雲が白いのは同じ現象」ということが印象に残りました。言われてみれば確かにその通りなのですが、牛乳が白い理由なんて今まできちんと考えたことがなかったので、とても腹落ちしました。豆知識としてどこかで絶対に披露しよう…
料理でも勉強でも何でもそうですが、作業の理由をきちんと理解して取り組むことはとても大事なことです。本作を熟読することで、きっと料理の上達も期待できますね!
よく分かる理系院生の生活
なんちゃってリケジョが蔓延っていますが、本作の端々に描かれる理系の院生生活の描写を読むにつけて、作者さんは確実にこちら側の人間であることが分かりました。
キムワイプの箱をラケット代わりに卓球なんて発想は、頻繁にキムワイプを交換した経験がなければ絶対に出てこないはず。ちなみに自分はキムタオル愛用派でキムワイプは補助的に使うタイプでした。
主人公たち2人も一見普通の女子ですが、会話で「トレードオフ」とか「パラダイムシフト」とか不穏な単語を当然のように使うあたり間違いなく生粋のリケジョです。液体窒素が「エキチ」と略されていたり、学振の採用で一喜一憂したり、論文投稿で質の悪いレフェリーに苦しむ様が描かれていたりと、理系院生のあるあるが小ネタとしてあちこちに詰めこまれています。そんな生活を懐かしみたい人や、はたまた事前に予習したい人にもおすすめの一作です。
ここまで書いてふと思いましたが、そもそもの物語の設定である「大学で深夜1時に毎日夜食を食べる」というシチュエーション自体が普通の人から見たら理解できないですよね… うん、理系の院生はそんなものなのです。
料理ものの小説が好きな人にはもちろん、料理に関する科学的な豆知識を知りたい人にもおすすめの作品です。理系院生の生活に興味がある人もぜひ。コミカライズ楽しみにしています!