『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる』 超弩級のスペシャリストを家臣に揃えて地方領主から天下布武を目指す

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ぎゅっと要約

  • 鑑定スキルを得て他人の能力値が見えるようになった主人公が、各分野の能力に秀でた人材を味方につけて成り上がっていくお話
  • 王道の戦記ものが好きな人、上手に設計された異世界の戦力バランスのもとで政略・戦略が絡み合う領土合戦を楽しみたい人におすすめ
  • 連載中、122話終了時点でおおよそ小説1冊強のボリューム
  • 書籍化およびコミカライズ決定!2020年6月26日にコミカライズ開始、7月2日に書籍版が発売予定とのこと

異世界の要素を取り入れつつ、よく練られた戦力バランスが魅力の戦記もの

未来人Aさんが「小説家になろう」、「カクヨム」にて連載中の作品です。正式な小説タイトルは『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる~弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた~』、小説内容が端的に分かる王道のタイトル付けですね。

2019年9月に投稿が開始されてから2~3日に1話のペースで着実に更新がされており、「カクヨム」でも年間ランキング上位に付けています。作者の未来人A先生は、過去に数作品を書籍化、コミカライズされた実績があり、本作についても本年6月にコミカライズ、7月に書籍版発売が予定されているとのことです。おめでとうございます!

王道の戦記ものです。転生によって他人のステータスが見える「鑑定」スキルを得た主人公が、優秀な能力を持つ配下を仲間に加えて、地方領主からの成り上がりを目指します。

これだけではよく見かける内容ですが、戦闘面でのバランスの設計がよく練られている点に本作の魅力があると感じました。戦記ものに「魔法」のような異世界要素を盛り込んだ場合、こと軍隊間での大規模戦闘においては魔法無双になってしまったり、主人公が対抗で作成した兵器無双になってしまったりしがちなのですが、本作では魔法に絶妙な制約を加えることで独自の世界観でバランスを取ることに成功しています。

やっぱり戦記ものは華の戦闘シーンが盛り上がってこそですよね!様々なシチュエーションがあり、場面にあった仲間が輝くので読んでいてとても楽しいです。書籍化、コミカライズも納得のおすすめの一作です。

オススメ度とおすすめしたい人

おすすめ度(133話時点)

★★★★(星4つ、おすすめ!)

★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。

おすすめしたい人

王道の戦記ものを読みたい人、ファンタジー世界を舞台としたバランスのとれた軍団戦を見てみたい人、チートスキル無双ではなく戦略・戦術に基づいた地域制圧ストーリーを楽しみたい人、『信長の野望』タイプの配下を采配して天下を狙うゲームの好きな人

あらすじ

帝国ミーシアン州の地方領主の息子アルスとして転生した主人公。武勇の才はないものの、他人の能力を数値として見ることのできる「鑑定」の能力を持っていた。帝国の権威が地に落ち各地で反乱が広がりつつある様子を見て、アルスは来るべき戦乱の世に備えるべく、鑑定で優秀な人材をスカウトしてまわるのであった。

そして時が経ちアルスが12歳となった年、州の総督の座を巡るお家騒動の真っただ中で父がこの世を去る。領主の座を継いだアルスは仲間たちを率いて、戦闘と謀略の渦巻く世界へ飛び込んでいくのであった。果たしてアルスの行く先には何が待ち受けているのだろうか。

主な登場人物

  • アルス
    領主の息子に生まれ変わった転生者。他人のステータスや適性を見ることのできる「鑑定」の能力を持つが、自分自身の能力は見ることができない。戦闘はあまり得意ではないため、基本的に仲間たちが頼り。ただし、多くの優秀な仲間たちや有力者を味方につけて戦闘を勝ち上がる様からは高いカリスマ性が感じられる。
  • リーツ
    当時4歳のアルスが鑑定ではじめて見いだした仲間。そのステータスはアルス曰く「信長」で、統率、武勇、知略、政治ともに素晴らしいポテンシャルを秘めている。帝国で差別を受けている「マルカ人」であるが、アルスの父との模擬戦を通して実力を認められ、アルスの右腕となる。
  • シャーロット
    アルスに見いだされた魔法兵の適性を持つ少女。女性を家臣とすることが極めて稀なこの世界だが、圧倒的な実力で周囲に文句を言わせなかった。その魔法の威力をして、まだ発展途上なのが恐ろしいところ。

大作の戦記ものを追体験しているかのような臨場感

王道展開の戦記ものです。弱小の領主からスタートして、戦いで功績を上げて権力者の信頼を得つつ領土を増やしていきつつ、最終的には上級貴族や皇帝となるのが戦記ものの定番ルートでしょうか。各小説の特色が出るところは功績を上げ方で、チートスキルによる無双だったり、知略・謀略だったり、はたまた圧倒的努力だったりと、様々なアプローチがなされてきています。

本作のストーリー展開はまさに王道で、小規模な戦いから徐々に国を巡る争いに巻き込まれていきます。戦闘のシチュエーションも城攻めあり、伏兵あり、調略あり、内部工作ありと、戦記物好きを満足させてくれる構成となっていますね。作者さん曰く、「超長編の作品を目指す」とのことでしたので、最終的には帝国や大陸外の大国を舞台にした大立ち回りが期待できそうです!

戦記ものの基本を押さえているだけではなく、ググっと引き込まれて一気に読み進んでしまう引力がこの小説にはあります。理由を考えてみたところ、鑑定での人材集めが戦記ものと上手くマッチしているのではないかと思い当たりました。

主人公のアルスはあちこちに出向いて優秀なステータスの家臣をスカウトし、イベントや戦闘の際にはステータスを考慮して家臣を最適に割り振って対応します。この流れがまるで地域制圧型のゲームをプレイしているかのようなんですよね。内政フェーズ、戦略・政略フェーズ、戦闘フェーズみたいな。読者はアルスを通じてゲームをしているかのような立場におかれることで自己主体感と臨場感を強く感じて、結果として小説に引き込まれるのではと感じた次第です。

戦場における魔法の上手な生かし方

異世界といえば魔法ですが、個人戦ではバランスが取りやすいものの、集団戦で戦術的な要素が出てくるととたんに扱いが難しくなります。いやだって、ティルトウェイトとかコメット的な魔法をガンガン撃ち込まれたら、人数も城塞もまったく役に立たないですよね。主人公に強力な魔法を与えると一方的な無双になってしまい、敵方に強力な魔法軍団がいる場合は対抗して近代兵器での無双になってしまうという悲劇が過去繰り返されてきました。

本作でも超弩級の魔法使いシャーロットが登場します。彼女の魔法を無双させすぎず、でもバランスよく活躍させる目的で、本作では「魔力水」と「触媒機」という仕組みが登場します。ここに非常に感銘を受けました。

まず「魔力水」は魔法を使用するのに必要な材料で、魔法使いは魔力水の属性に応じた魔法を使うことができます。強力な属性の魔力水は貴重という設定にすることで、無双魔法を連発する事態を避けることができます。さらに、使用する魔法のレベルと消費する魔力水量が比例するのもよい仕掛けですね。結果として、魔力水を戦略物資として弾薬と同じレベルで扱うことを可能としています。

更に面白いのが「触媒機」で、大規模な魔法は設置型の「大型触媒機」でないと使用できない設定になっており、城攻めでむやみやたらと隕石が降ってこないよう万全の態勢を敷いています。守備側は城内に大型触媒機を置いて強力な防御魔法を展開できるのも素敵です。

これらの仕掛けのおかげで魔法は戦術兵器の一つとの扱いにすることが可能となり、異世界的によくバランスの取れた戦闘を展開することが可能となっています。作者さんの設定の練り込みに脱帽です。

ただし、空間魔法で触媒機も魔力水も異空間に収納して単身攻めてくるような俺TUEEE主人公様はお断りです。

広がっていく戦乱とアルスたちの成長

122話現在では州内でのお家騒動の争いが行われていますが、今後は帝国全土に戦乱が広がっていくものと思われます。まだまだ能力に伸びしろの大きいアルスと仲間たちがどのように成長していくのか楽しみですし、異世界ならではの新しい戦術兵器の登場も待ち遠しいです。

本作は6月26日にコミカライズが開始、7月2日に書籍版が発売とのことで、まさに順風満帆ですね! 大規模な戦いが描かれるお話なのでコミカライズは非常に映えるのではないかと思います。完結に向けた応援も兼ねて、自分も応援したいと思います。

 

戦記ものの魅力を余すところなく味わうことのできる王道の作品です。優秀な家臣たちとともに、戦乱の世を駆け巡る主人公アルスの成り上がりを見たい人はぜひ。とても読みやすく幅広くおすすめできる作品です

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