『召喚士が陰キャで何が悪い』 異世界と現実で協奏する、若者たちの再生と成長の物語(かみや)

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感想とおすすめポイントまとめ

  • 異世界と現代を自由に行き来できる世界で、高校生たちが日常と冒険を繰り返しながら成長していく物語
  • 現実世界で折れてしまった主人公が、異世界冒険での同級生たちとの関わりと通して自分を取り戻し、成長していく姿がひたすら格好いい!
  • 若者たちの成長を描く青春群像劇の好きな人、青臭くも格好いい台詞回しがたまらない人におすすめ。異世界ファンタジーとしても世界設計、戦闘描写ともに高レベルで素晴らしい
  • 連載中。172話終了時点でおよそ小説3冊程度のボリューム

現実と異世界を自由に往来できる世界

かみやさんが「アルファポリス」、「ノベルアッププラス」にて連載中の作品です。アルファポリスのタイトルは『召喚士が陰キャで何が悪い~底辺が異世界で成り上がり無双するまで~』と副題がついていますが、内容はノベルアッププラス版と同様です。アルファポリスの投稿が先行しており、2019年12月の投稿開始から既に60万字弱と読み応えバッチリの作品です。

本作は異世界ハイファンタジーですが、現実と異世界を自由に行き来できる点に特徴があります。専用端末をセットすると寝ている間に異世界アルカディアに跳べるとの設定なので、VRMMOに近いイメージでしょう。主人公の藤間透は高校生であり、アルカディア参加が認可される特別クラスに通っています。つまり、現実でも異世界でもクラスメイトと接触することになるわけです。

この設定が絶妙で、異世界と日常で日々起こる出来事がお互いに影響し合うことで、一方通行の異世界転移や通常の学園ものでは描くことのできない、深みのある成長物語に仕上げられています。物語の端々で登場する主人公の台詞は本当に熱くておすすめですよ! いい年をした自分にすらも、ざっくりと刺さりました。

異世界ファンタジーとしてもよく練られており、金策にスキル成長に戦闘にと、余すところなく楽しめるストーリーとなっています。ここまで色々と詰め込んでも胃もたれを起こさせない作者さんの腕前には心から脱帽です。

ぜひとも多くの人に読んでもらいたい素晴らしい作品です!

オススメ度とおすすめしたい人

おすすめ度(172話時点)

★★★★★(星5つ、殿堂入り!)

★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。

おすすめしたい人

若者たちがお互いに交わりあいながら成長していく熱いストーリーが好きな人、熱い台詞回しがたまらない人、よく設計されたスキル制の異世界ファンタジーが読みたい人、召喚モンスターのモフモフに癒されたい人

あらすじ

藤間透は高校生、教室では常に気配を消している筋金入りの陰キャである。異世界アルカディアでの冒険を望み、アルカディア登録クラスのある鳳学園高校へと進学した。

アルカディアが発見されて早百年。今では携帯端末のスイッチさえ入れれば、寝ている間に気軽にアルカディアで冒険することができる。ただしそれは、現実世界でも異世界でも昼夜を問わずにクラスメイトと顔を合わせるということでもあった。

藤間透はアルカディアで召喚スキルを得たものの、肝心の召喚モンスターを手に入れることができず、アイテムを採取して日銭を稼ぐ生活を送る。戦闘スキルでモンスターをなぎ倒してレベルアップを続けるトップカーストのクラスメイトからは異世界でも馬鹿にされる始末。

そんな時、クラスメイトの足柄山沁子に出会う。沁子もクラスではドロップアウト組で、アルカディアでも生産職であるために戦闘ができず苦戦していた。互いの生活が軌道に乗るまで1週間限定で共同戦線を張ることにするのだが、これが全てのはじまりであることは透自身もまだ知らない。

主な登場人物

  • 藤間透
    本作の主人公。過去のトラウマが原因で捻くれてしまい、自らを陰キャと呼ぶ立派な陰キャとなってしまった。アルカディアでは召喚スキルを得たものの、肝心の召喚モンスターがいない。自らの力で強くなることに信念をもち、大切なものは全力で守る熱さをもつ。異世界でのクラスメイトたちとの交流を通して、少しずつ本来の自分を取り戻していく。
  • 足柄山沁子(アッシマー)
    透のクラスメイトでドロップアウト組。その容姿から「地味子」のあだ名をつけられるが、透から「アッシマー」と命名される。アルカディアでは生産職への適性を有しており、金策においては調合・錬金・加工といった生産スキルで活躍する。透との共同戦線が2人にとっての大きな契機となった。「どすこーい!」
  • 灯里伶奈(あかり)
    透のクラスメイトで美少女。クラスではトップカーストの集団に属している。アルカディアでは攻撃魔法に適性をもつ魔術師であり、コボルト程度であれば一撃で倒すほどの実力。過去のとある出来事が原因で、透に対して特別な思いを寄せているようであるが…

主人公たちの内面の成長がとにかく熱い!

冒頭でも書きましたが、現実と異世界を行き来しながら、どちらの世界でもクラスメイトたちと交流をするというのが非常に面白い仕掛けとなっています。

クラス転移はよくあるテンプレートですが、基本的にはひとたび異世界転移したら行きっぱなしですよね。陰キャが「やれやれだぜ」的に活躍をするのもありがちな流れですが、それは現実には戻ってこないから出来ること。もし、日々現実に戻れるのであれば、クラスのヒエラルキーの中できっと目立った動きはできないでしょう。

それを踏まえての本作ですが、物語の序盤こそはアルカディアでもトップカーストはトップカースト同士で、透やアッシマーもドロップアプト組としてチームを組むことになります。これは目が覚めれば現実での高校生活が待っているのだから当然のこと。ただし、冒険を通して現実世界では起きないような接点が生まれ、そこで生じた感情が現実世界にも波及していきます

物語が進むにしたがって、透やアッシマーのみならず、多くのクラスメイトがアルカディアでの冒険を通して感情を交わし、少しずつ変わりながら成長していきます。現実での生活が待っているがために登場人物の一つ一つの言葉や決断に重みがあり、読んでいて背筋が伸びる気がしました。

人間関係をこれほど鮮やかに表現できたのは、現実と異世界冒険を行き来するという設定があってこそ。作者さんの舞台設計は本当に素晴らしいです。メモ帳にたっぷりと書き写した「透の熱い台詞集」をぜひ共有したいところですが、ネタバレになってしまうので止めておきます。ぜひとも本作を読んでみてください!

スキル制ファンタジーとしても秀逸

ここまでの内容を読むと、人間ドラマがメインの作品のように思われてしまうかもしれませんが、スキル制のファンタジーとしても非常に読ませる内容となっています。

アルカディアはかなりハードな設計となっており、街の隣の草原に出てくるコボルトにすら攻撃スキル無しでは歯が立たない始末。敵を倒さなければレベルアップによる強化もできません。したがって、召喚モンスターのいない透と生産職のアッシマーは、採取で入手したアイテムを糧として、アルカディアで生きていくための日銭を何とか稼いでいくことになります。

限られたお金で入手するスキルを何にするのか、採取・生産するのはどのアイテムだと効率がよいのか、武器や防具にどこまでお金をかけるのか、等々。実際にRPGをやっているかのような感覚で、とても楽しく読ませて頂きました。

『召喚士が陰キャで何が悪い』とのタイトルですが、透が召喚モンスターを入手して、晴れて召喚士として活躍できるようになるのは物語がだいぶ進んでから。そこからは、強くも愛らしい召喚モンスターの活躍する熱いバトル展開も待っています!

戦闘シーンの臨場感についても申し分なく、至れりつくせりの贅沢な作品です。

 

ひとも多くの人に読んでもらいたい名作です。最新話ではまさに大きな決着を迎えるところであり、手に汗握る熱い展開から目が離せません!

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