『迷宮宿屋~空間魔法駆使して迷宮奥地で宿屋を開きます~』 マリーロズのダンジョン細うで繫盛記(海華)

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海華さんの作品、『迷宮宿屋~空間魔法駆使して迷宮奥地で宿屋を開きます~』 をレビューします。

  • 空間魔法の才に目覚めた主人公が必死の努力でその能力を伸ばし、冒険者のための宿屋ダンジョン奥地で開店するお話
  • 非戦闘員である主人公視点の物語とすることで、よくあるダンジョンものとは異なる趣を味わえるのが魅力。読者を飽きさせないストーリー展開もよい

 

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補給部隊で挑むダンジョン探索

海華さんが「小説家になろう」に掲載されている小説で、激戦の小説家になろうランキングで上位に食い込む人気作品です。

作者の海華さんが同じくなろうに投稿されていた『0歳児スタートダッシュ物語』は、コミカライズ後に巻を重ねる人気作となっていますが、本作「迷宮宿屋」との雰囲気の違いに驚きました。様々な作風を使い分けることのできる、とても幅の広い作家さんだと思います。

本作の主人公マリーロズは孤児院育ち。適性検査で手に入れた「空間魔法」は、少量の荷物の持ち運びに役立つ程度のハズレ扱いの能力でした。諦めないマリーロズは、常人には耐えがたい薬草や廃棄ポーションをがぶ飲みしてMPを増やし、空間魔法の収納容量を増やしていきますが…

本作はダンジョンものですが、マリーロズの空間魔法による迷宮宿屋、いわばダンジョン探索の兵站にスポットを当てている点に特徴があります。物語はマリーロズ主観で進むため、ダンジョン内の移動中は隠れているだけ、ひとたび宿屋を設営したら宿屋と補給と素材買取に明け暮れる様子が描かれます。主人公の華々しいモンスターとのバトルは無く、後方部隊として宿屋運営に徹底して打ち込む様子は、他の作品ではみられないオリジナルな展開だと思います。

そうかといって単調になることなく、非常にダイナミックなストーリー展開が待っているのが本作のすごいところ。作者さんの素晴らしい筆力のおかげで、山あり谷ありで次の読めない展開が続きます。探索や戦闘だけがダンジョンの醍醐味ではないってことですね。

本作は第1部が完了し、12月から第2部の開始が予定されているとのことです。第一部で広げた様々な風呂敷が、どのように今後の物語に関わってくるのかとても楽しみにしています!

  • 投稿サイト:「小説家になろう」
  • 21年8月投稿開始、連載中
  • 21年11月時点で約24万字、単行本2冊程度のボリューム

おすすめ度

第1部完了時点(2021年11月)

★★★★★(星5つ、名作!)

★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。

あらすじ

迷宮、それは魔物が溢れ出るところ。

冒険者は魔物を間引くが、残した死体を糧に魔物はさらに強くなった。

冒険者は魔物を間引くが、残した死体を糧に魔物はさらに強くなった。

そんな時、光を浴びたのが『空間魔法使い』だった。

孤児院育ちのマリーロズ。初めは使えない空間魔法に絶望するもコツコツとレベルをあげて夢を見つけ、叶えていくーーー。

「小説家になろう」本作ページより引用

先を読めない展開と懐の深さ

小説の面白さの重要な要素として「先の読めなさ」と「懐の深さ」があると思います。

一点目は文字の通りで、どれだけ読者を飽きさせないで読み続けさせるかということです。ストーリーがレールを逸脱せずに順調に続き過ぎ、今後の展開や結末が見えてきてしまうと途端に読む気力が無くなってしまうことってないでしょうか。「どうせ次の街でもボス倒すんでしょ」とか、「どうせ土壇場でスキルが生えて逆転するんでしょ」的なやつです。

こと本作のような経営ものだったり、スキル育成だったりすると先が見えてしまいがちなところ、名作と呼ばれる作品は華麗な展開で読者の読みを裏切って引き込んでいます。例えば、スキルものの名作「蜘蛛ですが何か」の序盤で言うと、レベルアップとスキル取得のルーチンができたところで、突然下層に突き落として積み上げたものを崩すわけです。あそこで堅実にレベルアップしていく展開であったら、皆に愛される蜘蛛子にはなりませんでした。

二点目の「懐の深さ」については、伏線と言い換えてもいいかもしれません。伏線はたくさん張ればいいというものでもないですが、効果的に使うと物語の深さがぐぐっと増すと思います。こちらも蜘蛛の例で言うと、「禁忌」の存在でしょう。このスキルのおかげでスキル取得に緊張感をもたらし、その後はストーリーの核心へとつなげることに成功しました。

翻って本作ですが、要所要所でマリーロズの立ち位置を変化させることで単調な展開を打破するとともに、第二部に向けた懐の深さもばっちりとなっています。自分は一晩で第一部を全て読み切ってしまったほどでした。マリィの更なる冒険をとても楽しみにしています!

  

ダンジョンものの新境地、とても面白い作品なので多くの人に読んでもらいたいです!

すごいのに純粋に色々とずれている主人公マリーロズの健気さは必見です。

  


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