『大ハズレだと追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』 熱いバトルとゲーム転生無双の絶妙のバランス(猫子)

holyjem

 

猫子さんの作品、『大ハズレだと追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』 をレビューします。

  • ゲーム転生で重騎士となったものの不遇クラスとして追放されてしまった主人公が、ゲーム知識で重騎士の隠されたスペックを引き出して無双していくお話。
  • 無双ものではありつつも、息をつかせない展開で熱いバトルを楽しむことのできる、ストーリー構成が見事な作品。オリジナリティあふれる癖のある登場人物たちにも注目。

 

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王道ゲーム転生無双の皮をかぶった熱い冒険物語

猫子さんが「小説家になろう」をはじめとしたオンライン小説サイトにて公開中の小説です。作者の猫子さんは、「転生したらドラゴンの卵だった~最強以外目指さねぇ~」、「不死者の弟子~邪神の不興を買って奈落に落とされた俺の英雄譚~」などの多数のノベライズ、コミカライズ作品を擁する実力派作家さんです。本作もカクヨムで☆10000を超えるなど、各サイトで高く評価されており、おそらく書籍化されるのではないでしょうか。もちろん面白さも折り紙付きです!

本作はゲーム転生もの、不遇クラスで追放からの無双の王道ストーリーです。主人公のエルマは転生者、前世でやり込んだVRゲーム「マジックワールド」の世界の伯爵家次期当主として暮らしていました。成人の儀式で激強クラス「重戦士」を獲得しますが、この世界ではその真価が知られておらず、ハズレクラスとして伯爵家を追放されてしまいます。エルマは冒険者となり、ゲーム知識を活用して無双をはじめますが…

転生無双の爽快さをしっかり味わいつつも、手に汗握る冒険や熱いバトルを楽しむこともできる、絶妙なバランスが素晴らしい作品です。よくある無双ものの場合、主人公の能力が強すぎて出オチになってしまいがちなところ、本作はよく練られたストーリー構成や重騎士のクラス設計のおかげで無双し過ぎることなく、主人公たちの成長も楽しめる展開となっています。レベルやスキルといったゲーム要素が主張しすぎることなく、格調高いファンタジーの世界観を作り上げている点も見事です。

最新ストーリーでは、気持ちよく成長を続けてきた主人公たちへ世界に起こりつつある異常が徐々に迫りつつあり、ますます楽しみの広がる展開となっています。爽快感だけの転生無双に少し疲れた方には特におすすめです!

  • 投稿サイト:「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」
  • 21年4月投稿開始、連載中
  • 21年8月時点にて約24万字、小説およそ2冊分のボリューム。

  

おすすめ度

86話時点(2021年8月)

★★★★(星4つ、おすすめ!)

★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。

あらすじ

「役立たずめ……剣聖の息子でありながら、こんな大ハズレを引こうとは!」

十五歳の〈加護の儀〉。剣聖の血筋であるエルマは、典型的なハズレクラスである重騎士を発現し、次期当主の座を奪われて追放されてしまう。重騎士は偏ったステータスに、使い所のないスキル。挙げ句に臆病で怠惰な者が得るクラスだとまでいわれていた。

だが、エルマは知っていた。この世界は彼が遊び尽くしたゲームの世界であり――重騎士こそが、最強のクラスであることを。エルマは生前の知識をフル活用し、この世界の効率的な攻略を始めるのだった。

「小説家になろう」本作ページより引用

無双しつつも熱いバトルに定評のある重騎士クラス

本作は無双もの、爽快感があって自分も大好きです。

ただ、バランスの調整がなかなかに難しく、主人公が無条件で強すぎると一方的かつマンネリ化で早期に飽きられてしまう一方で、バランスを取ろうとし過ぎると成長ものにジャンルがかわってしまうのが難点です。

加えて、下手にシチュエーションや能力制限に頼って展開に変化をつけようものなら、「そんなことされる前に最強スキルでちゃちゃっとやっちゃえばいいじゃん」、「その強スキルなら人質いても関係ないでしょ」等々の突っ込みをうけて、読者の爽快感が消え去ってしまうこと必至です。

本作は主人公エルマの「重騎士」の設計で上手くカバーしています。パッとしない防御クラスのはずが、尖ったスキルで防御と引き換えに一瞬の大火力を得る。定番の設計ではありますが、作者さんのストーリー構成の妙も合わさって、無双しつつも常に薄氷の上をいく熱いバトルを両立させることに成功しています。

スキルを徐々に成長させていく仕組みのおかげで、ゲーム要素的な楽しみを加えつつも自然にマンネリを打破している点もよいですね。常にフレッシュでギリギリな展開が待っています。

 

癖が強くて人間くさい登場人物たち

とてもキャラの濃い登場人物たちにも注目です。

追放からの無双ということで、追放した側へのざまぁ展開を期待したくなってしまうところですが、本作は追放側の人物像もしっかりしています。

エルマを追放した伯爵家当主ですが、上位クラスが貴族としての力と権威を示すこの世界では、弱小クラスの重騎士を引いて次期当主に相応しくなくなったエルマを見限るのは当然のことであり、後日談で当主と父の間で揺れる気持ちも描かれています。また、エルマを押しのけて後釜に座った幼馴染も、相当にこじらせている雰囲気が素晴らしく、今後ストーリーにどのように関わってくるか楽しみです。

仲間たちはもちろん、その他の登場人物たちもキャラの作り込みがとても深くて生き生きとしており、人間くさい言動に引き込まれること間違いなしでしょう。自分は強かな僧侶のメアベル、見掛け倒しのハレインさんが好みです!

 

無双もバトルもゲーム要素も楽しむことのできる欲張りな作品です。猫子さんの作品はどれも非常に面白くてオススメなので、気になったかたは是非ご一読を!

  

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