『100日後に死ぬ悪役令嬢は毎日がとても楽しい。』 それはまるでミステリーのように(ゆいレギナ)

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ゆいレギナさんの作品、『100日後に死ぬ悪役令嬢は毎日がとても楽しい。』をレビューします。

  • 婚約者の王太子を泥棒猫に獲られそうな悪役令嬢が、残りの寿命が100日であることを神様から告げられたことから、残りの人生を楽しく濃密に過ごすお話
  • 婚約破棄からざまぁ展開のテンプレを匂わせつつ、少しずつストーリーがずれていく様が面白い。伏線の張り方も美麗であり、まるでミステリー小説を読んでいるかのような読み応え

 

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悪役令嬢のざまぁを楽しむつもりが

ゆいレギナさんが「小説家になろう」をはじめとした各種オンライン小説サイト掲載されている作品です。今年8月に掲載開始され、約18万字のボリュームで既に本編は完結済み。現在は番外編がスタートしています。

なろうでも月間総合ランキング1位につけた実績のある本作ですが、投稿開始からわずか2ヶ月足らずにも関わらず、書籍化+コミカライズが決定したとのこと、本当におめでとうございます!

物語は主人公の公爵令嬢ルルーシェが「100日後に死ぬ」と神様から告げられるところからはじまります。折しもルルーシェは婚約者である王太子を男爵令嬢レミーエに取られかけている状況であり、今のままでは悪役令嬢として公爵家も巻き込んで破滅する未来が待っているとのこと。

「死の運命は変えられないものの過程は変えられる」との神様の言葉を信じて、ルルーシェは悔いのない最期を迎えるため、残りの人生を開き直って全力で生きることを決意します。最期に神様に「ぎゃふん」と言わせるために。

本作を読み始めたときには、王太子+泥棒猫レミーエのバカップルを気持ちよくざまぁしていく展開が待っているものだと思っていました。それは確かに間違いではなかったのですが、なんだか少しずつ違和感が出てきて…

はじめて読む方は、ぜひはじめの「閑話」まで進めてみてください。本作がテンプレ悪役令嬢ものではないことに気づかされて、ガッツリと衝撃を受けるものと思います。

その後も次々と明らかになる真実に加え、エンディングでは伏線も綺麗に回収されており、作者さんのストーリー構成の巧みさの光る作品となっています。

  • 投稿サイト:「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアップ+」
  • 21年8月投稿開始、完結済み
  • 約18万字、単行本1冊強のボリューム

おすすめ度

完結時点(2021年9月)

★★★★(星4つ、おすすめ!)

★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。

あらすじ

公爵令嬢ルルーシェは神様から天啓を受けた。
「100日後にきみは死ぬ」
ただでさえ婚約者の王太子殿下は他所の女にうつつを抜かし、婚約破棄目前だという噂もあるのに……。しかもその未来を聞いたとて、ルルーシェの死は変えられない。だけど境遇や死に方は変えられる――そう教えられたルルーシェは神様に賭けを申し出る。

「わたくしの死に様が美しければ、褒美を下さい」
「いいよ。次の人生に望むモノを何でもあげる」

さて、忙しくなりましたわよ……。あの泥棒猫をこのままにしておけません。引きこもりの弟もどうにかしませんと。万が一に備えて両親へのサポートも考えなければ。他にもやることが山積みですわ!
悔いのない最期を迎えるため、ルルーシェの神様すらも翻弄する開き直りライフが始まる!

「小説家になろう」本作ページより引用

作り込まれたキャラクターたちが支えるミステリー展開

本作のイチ押しは急展開するシナリオですが、その展開を支えているのはルルーシェをはじめとしたキャラクターの作り込みにあると思います。

ストーリーは基本的にはルルーシェ視点で進み、閑話についてはレミーエや王太子といったサブキャラの視点で展開されることになります。ルルーシェからは見えていない状況を第三者視点で語ることによって、あくまで悪役令嬢ものベースで進むルルーシェ視点の展開と実情とのズレが明らかになっていく仕組みですね。

この仕掛けを支えられるのは、それぞれのキャラクターがきちんと魅力をもって作り込まれているからこそだと思います。ざまぁテンプレの分かりやすい敵役の場合、そもそも主人公視点でも敵役視点でも見えるものは何も変わらないでしょう。

加えて、登場キャラ全員が深いところでは真っすぐな心を持っており、ルルーシェの行動を通して本当の気持ちが明らかになってくる点も気持ちいいです。個人的には、ぱっと見では昼行燈で空回りしがちな王太子の、パーフェクトな王太子弟に対する奥底に秘めた思いに心動かされました。

  

一味変わった悪役令嬢もの、次々明らかになる真実にドキドキしながら読ませて頂きました。完結時に至るストーリーのまとめ上げ方も見事です

  


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