『限界令嬢聖地巡礼紀行』 勇者オタクのオーガ令嬢と毒舌メイドの勇者道中膝栗毛(Yuiz)

ramen

Yuizさんの作品、『限界令嬢聖地巡礼紀行』 をレビューします。

作品の概要とおすすめポイントはこちら!

  • 極度の勇者オタクのハーフオーガのお嬢様と毒舌メイドが、勇者活躍の舞台である「聖地」を巡礼するドタバタ紀行
  • 異世界転移してきた人間の勇者の足跡を巡るというオリジナリティあふれる展開が特長の作品。伝説の地を観光客として眺めるという視点が面白い。お嬢様とメイドの凸凹コンビも魅力いっぱい。

 

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異世界の限界オタクが聖地巡礼をするお話

Yuizさんがノベルアッププラスにて20年11月に連載スタートしたばかりの作品です。Yuizさんといえば百合百合しい展開に定評がある作家さんですが、本作では登場人物こそ女性が多いものの百合成分は薄め。幅広い層で楽しむことのできる小説となっています。

本作の主人公は異世界に住むハーフオーガのピピルカお嬢様。日本からの転移者である勇者がかつて平和をもたらした世界が舞台であり、極度の勇者オタクであるピピルカがメイドのメグリムをお供に、勇者に由縁のある「聖地」を歴訪するストーリーとなっています。

「異世界転移で勇者となり魔王討伐」というネット小説の定番をベースとして、過去の勇者の旅路を異世界人が辿るという形で、勇者の人となりや冒険の様子が語られていくというオリジナリティあふれる設定がとても面白い試みとなっています。勇者側から描いたら手垢のついた凡百の作品となってしまうところを、視点を変えるだけでこれだけ新鮮な展開になるのかと正直感動しました。

勇者探訪の観光の風情も素晴らしく、ピピルカとメグリムの掛け合いもよい切れ味と、読んでいてとても楽しくなる作品です。

定番とは少し雰囲気の異なる小説にトライしたい方には、とてもおすすめです!

  • 投稿サイト:「ノベルアッププラス」
  • 20年11月投稿開始、連載中
  • 21年2月時点にて約11万字、小説およそ1冊分のボリューム。

おすすめ度

48話時点(2021年2月)

★★★★(星4つ、オススメ!)

★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。

あらすじ

「聖・地・巡・礼!」

伝説の勇者を激推しする限界オタクお嬢様と、一言多いメイドが繰り広げるハイテンションハイスピードコメディ!

エルフが営むラーメン屋、地下都市にある暗黒書店、水の都で開催される勇者フェス、魔王城ツアーなどなど……世界各地の聖地を巡礼して、様々な出逢いを経て、てんやわんや限界突破の大騒ぎ!

「ノベルアッププラス」本作ページより引用

平和となった聖地の風情が心地よい

勇者がもたらした平和の世において、かつての勇者の足跡を物見遊山で辿っていくという設定は、なかなかに乙なものです。

例として挙げると、小説の序盤でピピルカとメグリムがラーメン屋を訪れる場面があります。量産型転生小説で「米を探す」とか「醤油を製造する」とか「ラーメンを振舞う」とかはじまってしまうと即お腹がいっぱいになってしまうところ、「勇者が異世界に持ち込んだ料理の数々は勇者料理として広く親しまれており、その代表格であるラーメンを老エルフの古ぼけた屋台でいただく」となると、なんだか途端に面白そうな雰囲気になってくるのが凄いところです。

ピピルカ達は勇者所縁の場所を巡っていきますが、激闘の舞台であった魔王城すらも「魔王城ツアー」で見学できるほどの太平の世の中となっています。聖地巡礼というか歴史ツアーの気分で、かつての勇者の活躍の舞台を振り返っていくのがとても新しい切り口でした。

更にそれだけで終わらないのが作者さんの素晴らしいところで、ストーリー半ばから2人の巡礼の旅は急展開を見せます。そちらはぜひ小説で直接お楽しみください!

 

旅行記を盛り上げる濃すぎるキャラクター達

本作は広い区分で考える旅行記の枠となるのでしょうか。

旅行記で小説となると行程記録だけでは全く面白くないわけで、「持っている」旅人たちが引き寄せるイベント+トラブルこそが話の華となるわけです。近くは「どうでしょう」の大泉洋、古くは「東海道中膝栗毛」の弥次さん喜多さんと、歴史と伝統に裏打ちされた展開です。

本作においても、勇者が大好きすぎて所縁の物があれば匂いを嗅がずにはいられない限界お嬢様のピピルカ、メイドの立場でありながら常に心の声がだだ洩れの毒舌メイドのメグリムと役者はばっちり。ストーリー途中からはピピルカとは別波長のガチ勇者オタクも脇を固め、盤石の体制が構築されます。

登場キャラたちが観光しているだけ話しているだけで勝手に面白くなっていく展開は、読んでいても心地いいですよね。

そもそも、「主人公が限界勇者オタクのハーフオーガのお嬢様」という時点で既に相当のパンチ力ですから、作者さんのキャラクター創造力の凄さがよく分かります。

 

ピピルカの愛らしさに押されて直ぐに読み切ってしまいました。

タイトルで面白そうだと思った方はぜひご一読を!

完結を楽しみにしています。

  

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