感想とおすすめポイントまとめ
- VRMMOもの。ネタ属性のセカンドキャラ育成中にログアウト不可になってしまった主人公が、知識と技術を生かしてダンジョンを攻略していく
- まるで自分がゲームをしているかのようなストーリー展開が魅力。MMOらしさも詰め込まれており、かつてハマった人には堪らないはず
- MMOの世界観やゲーム性、人間関係が懐かしい人におすすめ。すっきりと読めるストーリー展開であり、VRMMOものが初めての人にも
- 連載中。94話終了時点でおよそ小説1冊分のボリューム
セカンドキャラでVRMMOの世界を生き抜こう！
ガチャ空さんが「カクヨム」にて連載中の作品です。開始から2ヵ月弱で既に94話に到達する頻度での投稿を継続されており、毎日の更新を楽しみにしています。カクヨムの総合ランキングでも日・週・月の全てで1桁前半を爆走していることからも、人気とレベルの高さがうかがえます。
作者のガチャ空さんですが、オンラインゲームを題材とした作品である『ジェネシスオンライン』が有名で書籍化もされています。本記事で紹介している『トップランカーのプレイヤーでしたが…』も含めて、作品の端々にMMOについての造詣の深さが感じられ、MMOにハマったことがある人であれば「あるある！」と刺さるストーリー展開が満載です。作者さんも相当のやり込みゲーマーだったものと推測しますが、いかがでしょうか。
さて、本作はVRMMOものです。VRMMOの世界からログアウトできなくなって閉じ込められる流れは『.hack』がはしりでしょうか。もう20年も前になるんですね。ADSLでの定額通信が当たり前になり、数々の名作MMOが生まれた時代でもありました。
本作の特徴は主人公が初期状態のセカンドキャラであることです。MMOプレイヤーならご存じの通り、経験と知識に基づいたセカンドキャラの超スピードでのストーリー進行やレベリングは爽快ですよね。本作においても、セカンドキャラ設定を活用することで、自然な形で俺TUEEEとサクサク攻略の爽快感を味わうことができます。
ストーリーはダンジョン攻略に集中しており、読んでいて自分がゲームをしているかのように感じるほど。MMOにどっぷり浸かったことがある人にはぜひ読んでもらいたい作品です！
オススメ度とおすすめしたい人
おすすめ度（94話時点）
★★★★（星4つ、オススメ！）
★5つで満点。かぴばーの個人的好みに基づいたスコアです。
おすすめしたい人
かつてMMOに人生と青春を捧げた人、MMOの世界観や人間関係の懐かしい人、すっきりと読めるストーリー展開の好きな人、レアドロップや武具強化という単語に喜びと悲しみが交錯する人 クホホホホ
あらすじ
主人公ソラはVRMMOゲームのトップ旅団『天下布武』を率いる団長である。心の置けない旅団の仲間たちとダンジョン攻略を進める一方で、トップランカーの立場を離れて、気軽な気持ちで改めてゲームを楽しみたい気持ちが大きくなっていた。
攻略に一区切りがついたある日、ソラはセカンドキャラの育成を始めることを決意する。旅団は副団長に一時任せて、新キャラ「リク」としてレベル1で降り立ったはじまりの街。ゲームを始めた日を思い出して周囲を懐かしく見渡すのもそこそこに、プレイヤースキルを活かしてパワーレベリングを開始するのだった。
その後、狩場で助けた縁がもとで、初心者のヒナタ、メイとパーティーを組むこととなり、リクはゲームの世界を満喫する日々を送る。しかし、タイムリミットは刻々と迫り、大型イベントにヒナタとメイと一緒に参加するのを最後に、ソラとして団長に戻ることを決めるのであった。
そして迎えたイベントの日、リクが自分の正体を2人に明かそうとした瞬間、『この世界を外部から遮断しました』との謎のメッセージが流れ、全てのプレイヤーがゲームの世界に閉じ込められてしまう。リクは真相を知るため、ヒナタとメイとともに最深部を目指すのだが…
主な登場人物
- リク（ソラ）
本作の主人公。トップ旅団『天下布武』を率いるソラのセカンドキャラ。自らのプレイヤースキルを試すため、不遇と言われる風属性を選ぶ。ゲームを楽しむため、持ち込みアイテムは風属性レア指輪のみという徹底ぶり。パーティーメンバーには、ファーストキャラがソラであることを話していない。 - ヒナタ
はじまりの街のそばでモンスターに襲われていたところをリクに助けられてパーティーとなる。攻撃も回復もそつなくこなす水属性ヒーラー。メイとは姉妹であり、姉妹揃ってドロップ運が抜群。 - メイ
ヒナタの妹で闇属性アタッカー。本ゲームは初心者だが、別ゲームではランカーの腕前であり、アタッカーとしてのセンスは抜群。外れ属性であるリクに難色を示すも、その実力に納得してパーティーとなる。
MMOにハマったことのある諸兄に深く刺さる一作
MMOが大きく盛り上がったのは、2000年に入ったころだったでしょうか。ラグナロクやリネージュ、FF XIといった有名MMOが次々とリリースされ、コンシューマゲームとは違ったプレイヤー同士のコミュニケーションや協力プレイにハマったひとも多かったと思います。
自分も大学時代がこの黄金期にちょうど重なっており、ラグナロクにどっぷりハマって、某鯖のトップギルドの結成メンバーになるまでやり込んでいました。理系の研究室生活の始まりとともに離れてしまいましたが、本作を読んで、ギルドメンバーとのボス狩りの日々やGvGでの城攻め・城守りに明け暮れた日々を鮮明に思い出しました。
本作には「MMOあるある」が随所にちりばめられており、ハマったことのある人は間違いなく当時を思い出して読み進んでしまうと思います。「セカンドキャラの快適サクサク育成」とか、「高レベル帯の1レベル上げるのに1ヵ月狩り」とか、「0.1%確率のレアドロップの物欲センサー」、はたまた「武具強化と失敗」などなど、自分もすっかり忘れていた喜びと悲しみ（悲しみ9割）の記憶が思いがけず呼び覚まされました。
また、MMOならではの人間模様についても、おそらく作者さんの実体験に基づいて、よく描かれています。はじめてパーティーを組んでみたときのドキドキ感、有名になったりトップクランに属したりすることの息苦しさや、集団の数の暴力による狩場やアイテムポップの占拠などなど、深くやり込んだことのある人であれば当時をきっと懐かしく思い出すこと間違いありません。
ゲーム攻略に全力集中していることも良し
VRMMOでログアウト不可となると、現実に戻る方法を探し続けたり、デスペナにおびえたり、陰謀や黒幕の不穏な影が見えたりといった展開が多いかと思いますが、本作では脇目を振らずにダンジョンをまっすぐ攻略していきます。
「遮断後に真実は最深部にあるとのアナウンスがあった」、「下層に到達すればソラの装備や旅団仲間の協力が得られる」といった動機付けはあるものの、ログアウト出来ないという命に係る大事件が起こったにも関わらず、ひたすら攻略を続ける姿勢に少し違和感を覚えたりもしました。
ただし読み進めていくと、本作は「MMO攻略を小説の世界で楽しむ」ことに全振りされており、上記のような現実世界が絡むような雑音は作者さんの配慮で除かれているのだということが強く感じられます。まさに「MMO愛」ですね。まるで自分がゲームをしているかのような、上質なリプレイを視聴しているかのような臨場感は、このゲーム攻略全力集中の設定があってこそ生まれるものなのでしょう。
MMOをプレイしたことのある人には間違いなく刺さる作品、ぜひ読んでみて欲しいです！ 青春と人生を捧げた日々のことを、仲間と過ごした楽しい時間を一緒に思い出しましょう。（BGMはKOKIA『ありがとう』で）
